パーティー前夜、コスメカウンターで香りに迷う私の30分

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今夜のパーティーまであと4時間。私はデパートのコスメフロアで、テスターの蓋を開けたり閉めたりしている。

香りって不思議で、つけた瞬間はいい感じだと思っても、30分後に「あれ?」ってなることがある。去年の忘年会で失敗したんだよね。甘めのバニラ系をつけていったら、暖房の効いた会場で自分の香りに酔って、料理が全然楽しめなかった。あの日のローストビーフ、今でも恨んでる。

だから今回は慎重になってる。パーティーといっても友人の結婚記念パーティーで、会場はちょっとしたレストラン。カジュアルすぎず、かといってガチガチのフォーマルでもない、あの微妙なラインの集まり。TPOって言葉、こういう時に限ってやたら頭をよぎる。

美容部員さんが「こちら、今の季節におすすめです」って差し出してくれたのは、柑橘系のトップノートが爽やかなやつ。手首につけてもらって、しばらく待つ。蛍光灯の光が反射するガラスケースを眺めながら、香りが肌になじんでいくのを待つ時間って、なんだか病院の待合室みたいだなと思った。関係ないけど。

ミドルノートが出てきた頃、ふわっとジャスミンっぽい何かが香ってきて、これは悪くないかもしれない。でも「悪くない」って、結局どうなんだろう。積極的に「いい!」って思えないと、後で後悔するタイプなんだよね、私。優柔不断とも言う。

「やさしい香りがお好みでしたら、こちらも」と別のボトルを出してくれる。パッケージがシンプルで好み。ムエットに吹きかけてもらうと、最初はほとんど香らない。あれ、壊れてる? って一瞬思ったけど、数秒後にじわじわと広がってくる感じ。これ、計算されてるやつだ。ホワイトムスクとかシアバターとか、そういう系の落ち着いた香り。

実は今日、仕事帰りに寄ったから、まだオフィスで使ってた香水が首筋に残ってるかもしれない。朝つけたフローラル系のやつ。混ざったらどうなるんだろう。考えだすとキリがないんだけど、こういう細かいこと気にしちゃうのが面倒くさい性格だなって自分でも思う。

カウンターの向こうでは、別の女性が真剣な顔でファンデーションの色を選んでいる。彼女は多分、私よりもっと大事な用事があるんだろう。就活の面接とか、お見合いとか。比べたら私のパーティーなんて気楽なもんだ。

結局、さっきのやさしい系の香水を手に取る。「これ、ください」って言いながら、本当にこれでいいのかなって心の片隅で思ってる自分がいる。でも、もう決めた。時計を見ると17時40分。家に帰ってシャワー浴びて、服選んで、メイク直して…時間ない。

レジで会計を待ちながら、ふと思い出したのは高校生の頃。初めて買った香水が「エターナルブロッサム」っていう、今思えば恥ずかしい名前のやつで、学校につけていったら「なんか甘い匂いする」って男子に言われて、顔から火が出るほど恥ずかしかった記憶。あれから何年経ったんだろう。

包装された小さな箱を受け取って、エスカレーターを降りる。

今夜、この香りが私にとって「正解」だったかどうかは、パーティーが終わってみないとわからない。まあ、そんなもんだよね。
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組織名:株式会社スタジオくまかけ / 執筆者名:上辻 敏之

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