今夜のパーティーまであと3時間。クローゼットから引っ張り出したワンピースはアイロンがけ済みで、靴も磨いた。残るは香り選び。
デパートのコスメフロアに着いたのは午後4時過ぎだった。西日が差し込む売り場で、私はいつものように迷っていた。フローラル系の甘い香りが鼻をくすぐる。隣のカウンターからはシトラスの爽やかな匂いが漂ってくる。BAさんが微笑みながら近づいてくるのが見えて、思わず一歩後ずさりしてしまう自分がいる。
香りって難しい。
去年の忘年会で失敗したことを思い出す。張り切って新しく買ったばかりの香水を、これでもかというくらいつけていったら、隣に座った先輩に「今日、香水強くない?」って言われた。あの時の恥ずかしさったらない。帰りの電車で、自分の匂いに酔いそうになりながら、なんであんなにつけちゃったんだろうって後悔した記憶が生々しい。
TPOって言葉があるけれど、香りにもTPOがあるんだと気づいたのはその時だった。会社の飲み会と友達のパーティーは違う。昼間のランチと夜のディナーも違う。当たり前のことなのに、コスメカウンターの前に立つと全部忘れてしまう。
そういえば、高校の時の親友が言っていたことを思い出した。「香りって、自分のためじゃなくて周りの人のためにつけるものなんだよ」って。当時は何を言ってるんだって思ったけど、今ならわかる気がする。
今日のパーティーは友人の誕生日会。会場は小さなレストランで、たぶん20人くらい集まる。狭い空間だから、強すぎる香りは避けたい。でも、せっかくのお祝いの席だから、少しだけ特別な気分になれる香りがいい。やさしくて、でも印象に残る香り。
BAさんに声をかけられて、正直に今日の予定を話してみた。「パーティーなんです、友達の誕生日で」って。そうしたら、彼女は「それなら、これはどうですか」って、ピンク色のボトルを差し出してくれた。ムエット(試香紙っていうやつ)に吹きかけてもらうと、最初は柑橘系の軽やかな香りがして、そのあとふんわりとした花の香りが追いかけてくる。
「トップノートは軽めで、ミドルからやさしいフローラルになります。ラストはムスクで落ち着くので、食事の席でも邪魔にならないと思いますよ」
専門用語が飛び交うけど、要するに時間とともに変化する香りってこと。面白いのは、最初につけた時と30分後では全然違う顔を見せるところ。人間みたいだなって思った。
手首につけてもらって、しばらく店内をぶらぶらした。リップコーナーを眺めたり、新作のアイシャドウパレットを試したり。15分くらい経った頃、ふと手首の香りを確認してみる。さっきの柑橘の爽やかさは落ち着いて、代わりに優しい花の香りが肌に馴染んでいた。これなら大丈夫かもしれない。
レジに向かいながら、ふと思った。香り選びって、結局のところ「誰といるか」で決まるんじゃないかって。一人で過ごす休日なら好きなだけ濃厚な香りをまとえばいい。でも今日みたいに大切な人たちと過ごす時間には、相手を思いやる香りを選びたい。それが私なりのTPOなのかもしれない。
包装してもらった小さな紙袋を持って、デパートを出る。時計を見ると5時半。まだ少し時間がある。カフェで一息ついてから、会場に向かおうかな。
バッグの中で、新しい香りのボトルが小さく揺れている音がする。今夜はきっと、いい夜になる…と思いたいけど、まあ、どうなるかはわからない。
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組織名:株式会社スタジオくまかけ / 執筆者名:上辻 敏之

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