今夜のパーティーまであと3時間。クローゼットから引っ張り出したドレスはアイロンがけも済んで、メイクの段取りも頭に入ってる。なのに香水だけが決まらない。
デパートのコスメフロアに着いたのは午後4時過ぎで、西日が斜めに差し込んでくる時間帯だった。いつもならネットで済ませちゃうんだけど、今回ばかりは実物を嗅がないとダメだと思って。だってパーティーの主役は取引先の偉い人で、会場はあの高層ホテルの最上階。つまり、完全にTPOってやつを意識しないといけない場面。
正直に言うと、私は香水選びがめちゃくちゃ苦手で。
去年の春、友達の結婚式で張り切ってバニラ系の甘い香りをつけていったら、隣に座ってた親戚のおばさまに「お若いのねえ」って遠回しに言われたことがある。あれ、絶対「場にそぐわない」って意味だったと今でも思ってる。それ以来、香りって本当に難しいなって。自分では気づかないうちに、周りの空気を変えちゃうものだから。
美容部員さんに「やさしい印象の香りを探してるんですけど」って伝えたら、彼女は慣れた手つきで5本くらいムエット(試香紙っていうんだっけ)を並べてくれた。最初に嗅いだのは柑橘系のさっぱりしたやつ。爽やかで清潔感はあるけど、なんていうか、ちょっと朝っぽい。今から行くのは夜のパーティーなんだよなあ…。
次に差し出されたのがフローラル系で、これが意外と良かった。ローズとジャスミンが混ざってるらしいんだけど、甘すぎなくて、でもちゃんと華やか。「これ、ラ・ヴェリテっていうブランドの新作なんです」って美容部員さんが教えてくれて、ボトルのデザインもシンプルで上品。ただ、もう一押し何かが足りない気がして、私はまだ決めきれなかった。
そういえば、高校生の頃は香水なんて全然興味なくて、むしろ柔軟剤の香りで十分だと思ってたんだよね。でも社会人になってから、香りって「自分をどう見せたいか」のメッセージになるんだなって気づいた。強すぎると押しつけがましいし、何もつけないのも味気ない。ちょうどいいバランスを探すのが、大人になるってことなのかもしれない…なんて、ちょっと大げさか。
カウンターの奥から別の美容部員さんが持ってきてくれたのは、ウッディ系の落ち着いた香り。これがまた絶妙で、最初はサンダルウッドの温かみがあって、時間が経つとほんのり白檀みたいな深みが出てくる。「大人の女性に人気なんですよ」って言われて、ああ、これだって思った。派手じゃないけど、ちゃんと存在感がある。パーティー会場で誰かとすれ違ったとき、「あ、いい香り」って思ってもらえそうな、そういう控えめな主張。
試しに手首につけてもらって、しばらく待ってみる。香水って、肌にのせてから10分くらい経たないと本当の香りがわからないって聞いたことがあるから。カウンターの横にあるソファに座って、スマホをいじりながら時間を潰してた。窓の外では夕暮れが始まってて、街灯が少しずつ明るくなっていく。
手首を鼻に近づけると、さっきよりもまろやかになってる。きつくない。これならホテルのエレベーターで一緒になった人にも迷惑かけないし、食事の席でも邪魔にならない。TPOって結局、相手への配慮なんだよなって改めて思った。自分が好きな香りと、その場にふさわしい香りは、必ずしも一致しないから。
レジで会計を済ませて、小さな紙袋を受け取る。美容部員さんが「素敵なパーティーになりますように」って笑顔で言ってくれて、なんだか少し緊張がほぐれた。
家に帰ってシャワーを浴びて、ドレスに着替えて、メイクを仕上げる。最後に、さっき買った香水を手首と首筋にひと吹き。鏡の中の自分が、いつもよりちょっとだけ大人びて見える気がした。気のせいかもしれないけど。
タクシーを呼んで、ホテルに向かう。車窓から見える夜景がきらきらしてて、少しだけ非日常を感じる。パーティーがうまくいくかどうかはわからないけど、少なくとも香りの選択は間違ってない…と思いたい。
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組織名:株式会社スタジオくまかけ / 執筆者名:上辻 敏之

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