朝、目覚まし時計が鳴る。いつもより少し早めに起きた今日は、重要な会議がある日だ。プレゼンテーションの資料は完璧に仕上げた。あとは、自分自身を整えるだけ。鏡の前に座り、私は静かに深呼吸をする。今日の私には、凛とした強さが必要だ。そのために選ぶのは、単なる化粧ではない。仕事に臨む私を支える、戦略的なコスメたちである。
オフィスという場所は不思議な空間だ。そこでは、実力だけでなく、見た目の印象も確実に評価に影響する。だからこそ、私は朝のメイクアップを決して軽視しない。これは自己満足のためではなく、ビジネスパーソンとしての責任であり、相手への敬意でもある。清潔感、知性、そして信頼感。それらすべてを顔という小さなキャンバスに表現しなければならない。
まず手に取るのは、肌を整えるベースメイクのアイテムだ。オフィスでの仕事は長時間に及ぶ。朝九時から夕方六時まで、時には残業で夜遅くまで。その間ずっと崩れない、それでいて厚塗り感のない自然な仕上がりが求められる。私が選ぶのは、セミマットな質感のファンデーション。光を適度に反射しながらも、テカリを抑えてくれる絶妙なバランス。これを薄く均一に伸ばすことで、素肌が美しい人という印象を作り出す。コンシーラーは必要最小限に。隠すのではなく、整える。その違いが、洗練された印象を生む。
次に重要なのは眉だ。顔の印象を決める最も重要なパーツと言っても過言ではない。凛とした印象を作るには、眉の形と色が鍵を握る。私は自然な太さを保ちながらも、眉尻をやや長めに描く。これにより、意志の強さと知性が表現される。使うコスメは、パウダーとペンシルの両方。ペンシルで輪郭を定め、パウダーで自然に埋める。色は髪色よりワントーン明るめを選ぶことで、柔らかさと親しみやすさも同時に演出する。仕事ができる人は、近寄りがたい冷たさではなく、話しかけやすい温かさも持ち合わせているべきだから。
アイメイクには特に気を配る。目は口ほどに物を言うという言葉があるが、オフィスではまさにその通りだ。今日のような重要な会議では、疲れた印象や不安げな表情は絶対に見せられない。私が選ぶアイシャドウは、ブラウン系のグラデーション。ベージュからミディアムブラウンへと自然につながる色の流れが、目元に立体感と深みを与える。ラメは控えめに、もしくは全く使わない。光を反射するパール感だけで十分だ。派手さではなく、上品さ。それがオフィスコスメの鉄則である。
アイラインは細く、しかし確実に引く。目の輪郭をはっきりさせることで、眼差しに力が宿る。まつ毛はビューラーでしっかりと上げ、マスカラは繊維入りのものを選ぶ。長さと量感を出すことで、目力が増す。ただし、束になったり、ダマになったりしないよう、コームで丁寧にとかす。細部への配慮が、全体の印象を左右する。
チークとリップは、顔色を健康的に見せるために欠かせない。しかし、ここでも「やりすぎない」ことが重要だ。チークはコーラルピンクやベージュピンクなど、肌なじみの良い色を選ぶ。頬骨の高い位置に、ふんわりと入れる。血色が良く、活力のある印象を与えながらも、主張しすぎない。リップも同様に、自然な血色を意識する。マットすぎると老けて見え、グロッシーすぎると幼く見える。セミマットで、ほんのりツヤのある質感が理想的だ。色はローズ系やモーヴ系。知的で落ち着いた印象を演出する。
こうして一つひとつのステップを丁寧に重ねていくと、鏡の中に現れるのは、いつもの私でありながら、どこか違う私だ。凛として、自信に満ちて、それでいて柔らかさも失わない。これが、私が目指すオフィスメイクの完成形である。
化粧を終えた私は、スーツに袖を通す。きちんとプレスされたシャツ、体にフィットするジャケット。そして、今日のために選んだコスメによって作られた顔。すべてが調和して、「仕事をする私」という一つの作品が完成する。
オフィスに到着し、会議室に向かう。同僚たちが集まり、クライアントが入室する。資料を開き、プレゼンテーションを始める。言葉に力がある。視線に説得力がある。それは、入念に準備した内容のおかげでもあるが、自分自身への信頼があるからでもある。そしてその信頼の一部は、朝鏡の前で時間をかけて作り上げた、この顔によって支えられている。
コスメは単なる化粧品ではない。それは、私たちが社会で戦うための武器であり、鎧であり、そして自分自身を鼓舞するためのツールでもある。特にオフィスという場では、適切なメイクアップは、能力を最大限に発揮するための環境を整える行為なのだ。
会議は成功裏に終わった。クライアントからの反応も上々で、プロジェクトは次のステージへと進むことが決まった。オフィスに戻り、デスクに座る。ふと鏡を見ると、朝のメイクは少し崩れているけれど、凛とした表情は変わらない。それは、コスメが作った表面的な美しさだけでなく、仕事をやり遂げた充実感が、内側から輝いているからだろう。
今日も、私は戦った。そして、明日もまた戦う。その時、私を支えてくれるのは、能力と経験、そして戦略的に選ばれたコスメたちだ。仕事をする女性にとって、メイクアップは自己表現であり、プロフェッショナリズムの証でもある。凛とした私であり続けるために、私は明日も鏡の前に座り、丁寧にコスメを重ねていくだろう。
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組織名：株式会社スタジオくまかけ / 執筆者名：上辻 敏之
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