窓の外はまだ薄暗く、世界が目覚める前の静けさが部屋を満たしていた。五月の早朝、少しひんやりとした空気が肌に心地よく、カーテンの隙間から差し込む青白い光が机の上のボトルたちを照らしている。今日は何だか、理由もなく元気な気分だった。こういう朝は久しぶりかもしれない。最近は仕事に追われて、自分のための時間を持つことすら忘れていたから。
机の引き出しから、お気に入りのネイルポリッシュを取り出す。淡いコーラルピンクのそれは、去年の冬に偶然立ち寄った雑貨店で見つけたものだ。ブランド名は「リュクスフルール」という、聞き慣れない名前だったけれど、その色味に一目惚れして迷わず手に取った。蓋を開けると、ほんのりと甘い香りが漂う。ネイルの香りというのは、どうしてこんなにも記憶と結びつくのだろう。
筆を取り出し、爪に色を重ねていく。最初の一塗りは薄く、透明感がある。二度塗りすると、色が深まり、指先が少しだけ華やいで見える。この作業が好きだ。静かに、丁寧に、自分だけのために時間を使うこと。ワクワクする気持ちが、指先から全身へと広がっていくような感覚がある。
子どもの頃、母がよく爪を塗っていた姿を思い出す。当時の私には、大人だけが許される特別な儀式のように見えていた。母は器用に筆を動かし、まるで絵を描くように丁寧に色を重ねていた。ある日、私も真似してみたくて、こっそり母のネイルを拝借したことがある。ところが筆の扱いに慣れていなかった私は、爪からはみ出して指全体がピンク色に染まってしまった。慌てて除光液で拭き取ろうとしたものの、余計に広がるばかりで、結局母にバレてしまった。あの時の母の苦笑いが、今でも忘れられない。
今の私は、あの頃よりは上手に塗れるようになった。それでもたまに、はみ出してしまうことがある。完璧を求めすぎず、少しくらいのズレは愛嬌だと思うようにしている。人生も、きっとそういうものだ。
ネイルを塗り終えて、乾くのを待つ間、窓の外を眺める。空がだんだんと明るくなり、鳥のさえずりが聞こえ始めた。この時間帯の静けさと、少しずつ動き出す世界のコントラストが好きだ。誰にも邪魔されない、自分だけの時間。
ふと、先日友人と会った時のことを思い出す。彼女は久しぶりに会ったにもかかわらず、私の爪を見て「ネイル、変えたんだね」と気づいてくれた。些細なことに気づいてくれる人がいるというのは、嬉しいものだ。その時彼女が差し出してくれた温かいカップの感触、湯気の向こうに見えた彼女の穏やかな笑顔。何気ない瞬間が、心に残る。
静かな心で過ごす朝は、自分自身との出会いでもある。忙しい日々の中で見失いがちな、本当の自分の気持ち。今日は何を感じているのか、何を求めているのか。ネイルを塗るという小さな行為が、そんな問いかけのきっかけになる。
コスメというのは不思議なもので、ただの色や香りではなく、気持ちを変える力を持っている。新しい口紅を手に入れた日は、少し背筋が伸びる。お気に入りの香水をつけた朝は、一日が特別なものになる。そしてネイルを塗った指先は、ふとした瞬間に目に入るたびに、小さな幸せを思い出させてくれる。
爪が完全に乾いたのを確認して、そっと指を動かしてみる。光に当てると、ほんのりと輝く。この色は、春の終わりと夏の始まりの間にある、曖昧で優しい季節にぴったりだ。今日一日、この指先と一緒に過ごすのだと思うと、なんだか心強い。
コーヒーを淹れに立ち上がる。キッチンに向かう途中、鏡に映った自分の姿を見て、少しだけ微笑む。今日は、いい一日になりそうだ。そんな予感がする。理由なんてなくていい。ただ、今この瞬間が心地よくて、それだけで十分だ。
静かな心と、小さなワクワクが出会う朝。コスメという小さな魔法が、日常を少しだけ特別なものに変えてくれる。そんな朝を、私はこれからも大切にしていきたいと思う。
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組織名:株式会社スタジオくまかけ / 執筆者名:上辻 敏之


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