朝の光がまだ柔らかい時間帯に、私はテーブルの前に座っていた。窓の外では春先の風が吹いていて、カーテンが少しだけ揺れている。今日は何だか妙に元気で、理由もなくワクワクしている。こういう日は、何かを始めたくなる。そうだ、ネイルを塗ろう。そう思い立って、引き出しの奥から小さなボトルを取り出した。
ネイルを塗るという行為は、私にとって小さな儀式だ。誰かに見せるためではなく、自分のためだけに色を選び、丁寧に筆を動かす。その時間は、まるで自分と対話しているような静けさがある。今日選んだのは、淡いコーラルピンク。まるで夕焼けの空を溶かしたような、優しい色だった。
ボトルのキャップを開けると、独特の香りがふわりと広がる。あの、ネイルカラー特有の甘くて少しツンとした匂い。好きか嫌いかで言えば、正直微妙なラインだけれど、この香りを嗅ぐと「今から自分を整える時間なんだ」と心が切り替わる。不思議なものだ。
最初の一筆を爪に乗せる瞬間、いつも少し緊張する。筆先がぶれないように、息を整える。ゆっくりと、根元から先端へ。一度塗り、二度塗り。光の加減で色が変わって見えるのが面白い。窓際で見るとオレンジに近く、部屋の奥では桜色に見える。
子どもの頃、母がリビングで爪を塗っていた姿を思い出す。母は決まって日曜日の午後に、テレビを見ながらネイルを塗っていた。私はその横で宿題をしながら、時々チラチラと母の手元を見ていた。あの頃の母は、今の私よりもずっと若かったはずなのに、記憶の中ではいつも大人で落ち着いていた。
ネイルを塗り終えて、両手を軽く振って乾かしていると、ふと思う。この色を選んだのは、何か意味があったのだろうか。色には不思議な力がある。気分を変えたり、記憶を呼び起こしたり、時には誰かとの出会いのきっかけにもなる。以前、カフェで隣に座った女性が、私と同じ色のネイルをしていた。それだけで何となく親近感が湧いて、少しだけ会話をした。彼女は「ルナージュ」というブランドのネイルが好きだと言っていた。私はそのブランドを知らなかったけれど、その響きが素敵で、後日調べてみたことを覚えている。
爪が乾くまでの時間、私はただぼんやりと窓の外を眺めていた。向かいのマンションのベランダに、誰かが洗濯物を干している。風に揺れる白いシャツが、まるで手を振っているように見えた。こんな何でもない風景が、今日はやけに愛おしく感じられる。
ネイルが完全に乾いたかどうか確かめようと、そっと指先を合わせてみる。まだ少しべたついている気がして、もう一度待つことにした。ところが、待ちきれずにスマートフォンを触ろうとして、親指の爪にうっすらと跡がついてしまった。ああ、やってしまった。慌てて修正しようとしたけれど、かえって広がってしまい、結局その部分だけもう一度塗り直すことになった。こういう小さな失敗も、なぜか今日は許せる気分だった。
静かな心でいると、些細なことに気づけるようになる。ネイルを塗るという行為も、ただ色を乗せるだけではなく、自分の内側を見つめる時間になる。爪という小さなキャンバスに、今日の気分を映し出す。それは誰かに見せるためのものではなく、自分自身への小さな贈り物だ。
コスメには、そういう力がある。口紅を引けば少し勇気が出るし、香水をつければ気持ちが切り替わる。ネイルを塗れば、指先に意識が向いて、日常の動作がほんの少し丁寧になる。カップを持つ手も、キーボードを打つ指も、何だかいつもより美しく見える気がする。
今日のワクワクは、もしかしたらこの小さな儀式から始まったのかもしれない。色を選び、筆を動かし、乾くのを待つ。その繰り返しの中に、自分を大切にする時間がある。そしてその時間が、一日を少しだけ特別なものに変えてくれる。
窓の外では、いつの間にか雲が流れて、日差しが強くなっていた。乾いたネイルが光を反射して、キラキラと輝いている。さあ、今日は何をしようか。この小さな色が、きっと私を新しい出会いへと連れて行ってくれる。そんな予感がしている。
#曜日コスメ
#今日のメイク
#メイクのある暮らし
#コスメ好きさんと繋がりたい
#毎日メイク
#気分で選ぶコスメ
#週末メイク
#デパコスとプチプラ
#コスメレビュー
#美容好きと繋がりたい
#日刊ブログメーカー
組織名:株式会社スタジオくまかけ / 執筆者名:上辻 敏之


コメント