朝の光が差し込むドレッサーの前で、私は小さなネイルボトルを手に取った。透明感のあるピンクベージュ。今日はこの色に決めた。なぜだか分からないけれど、今朝は目覚めた瞬間から心が軽くて、何か素敵なことが起こりそうな予感がしていた。こんな日は、指先から自分を整えたくなる。コスメの中でも特にネイルは、私にとって特別な存在だ。
ネイルを塗るという行為は、単なる美容ではない。それは自分自身と向き合う、静かな儀式のようなものだ。忙しい日常の中で、ほんの十数分、自分だけのために時間を使う。スマートフォンの通知も、誰かからのメッセージも、すべてを遮断して、ただ自分の指先に集中する。筆先が爪の表面を滑る感触、液体が徐々に乾いていく過程、そのすべてが瞑想のように心を落ち着かせてくれる。
思えば、私がネイルに目覚めたのは、人生で最も慌ただしかった時期だった。仕事に追われ、人間関係に悩み、自分が何者なのかさえ分からなくなっていた頃。ふらりと立ち寄ったコスメショップで、色とりどりのネイルポリッシュが並ぶ棚を見た瞬間、心が動いた。何かが変わるかもしれない。そんな淡い期待を抱いて、初めて自分のために選んだネイルカラーは、深い赤だった。
最初は不器用で、はみ出したり、ムラになったり、満足のいく仕上がりにはならなかった。でも、それでも良かった。完璧である必要なんてなかった。大切なのは、自分のために時間を使うこと。自分を大切にするという、シンプルだけれど忘れがちな行為そのものだった。ネイルを塗る時間は、私に静かな心を取り戻させてくれた。
コスメの魅力は、外見を変えるだけではなく、内面にも働きかけることだと思う。特にネイルは、日常生活の中で常に視界に入る。パソコンのキーボードを打つ時、コーヒーカップを持つ時、誰かと握手をする時。その度に、自分が自分を大切にしていることを思い出す。指先の小さな色が、自己肯定感という大きな感情を支えてくれる。
今日選んだピンクベージュは、優しさと強さを兼ね備えた色だ。派手すぎず、でも確かに存在を主張している。一層目を塗り終えて、乾かしながら窓の外を眺める。春の風が新緑の葉を揺らしている。季節の変わり目は、いつも何か新しいことが始まる予感がする。そして実際、人生の転機は予期せぬ形でやってくるものだ。
二層目を塗り始めた時、スマートフォンが鳴った。普段なら無視するところだが、今日は何となく手を伸ばした。大学時代の友人からのメッセージだった。「久しぶり。来週、新しくオープンするカフェでネイルのワークショップがあるんだけど、一緒に行かない?」
心臓が高鳴った。これだ。朝から感じていた予感は、これだったのかもしれない。私は即座に返信した。「行く!」と。出会いとは、人との出会いだけを指すのではない。新しい自分との出会い、新しい世界との出会い、新しい可能性との出会い。すべてが「出会い」なのだ。
ネイルを通じて、私は多くの人と繋がってきた。ネイルサロンで隣に座った女性と意気投合したこともあるし、SNSで自分のネイルデザインを投稿したことがきっかけで、同じ趣味を持つ人たちのコミュニティに参加することもできた。コスメという共通言語は、年齢も職業も超えて、人と人を結びつける力を持っている。
最後にトップコートを塗りながら、私は微笑んだ。今日という日が、また新しい何かの始まりになるかもしれない。来週のワークショップで、どんな人たちと出会えるだろう。どんなネイルアートを学べるだろう。そして、それが私の人生にどんな彩りを加えてくれるだろう。
ネイルが完全に乾くのを待つ間、私は自分の指先をじっと見つめた。十本の指、それぞれに丁寧に塗られた色。それは単なる装飾ではなく、自分を愛するという決意の表れだ。忙しい毎日の中で、自分を後回しにしてしまいがちだけれど、こうして指先に色を与えることで、「私は私を大切にしている」と宣言している。
静かな心は、騒がしい世界の中で、自分だけの安らぎの場所を持つことから生まれる。私にとって、それがネイルを塗る時間だ。そしてその静かな心が、新しい出会いを受け入れる準備を整えてくれる。心が乱れていては、目の前にあるチャンスにも気づけない。でも、心が静かで開かれていれば、人生は驚くほど豊かな贈り物を用意してくれる。
完成したネイルを眺めながら、私は今日という日に感謝した。コスメという小さな魔法が、私に元気とワクワクを与えてくれた。そして、これから始まる一日が、どんな素敵な瞬間で満たされるのか、心から楽しみだった。指先に咲いた小さな色が、私の人生に大きな変化をもたらす。そんな予感とともに、私は家を出た。
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組織名:株式会社スタジオくまかけ / 執筆者名:上辻 敏之


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