鏡の前に座り、メイクブラシを手に取る私の指先が、少し震えていることに気づく。今夜は、年に一度の大きな社内パーティー。普段は見ることのない他部署の人たちとの交流の機会に、期待と不安が入り混じった気持ちで胸が高鳴る。
化粧台には、今日のために新調したコスメたちが並んでいる。ベースメイクには、つけている時から華やかな気分になれる、微細なパールが入ったリキッドファンデーション。その上からふんわりと重ねるフェイスパウダーは、上品な輝きを放つハイライトカラー。どちらも、パーティーシーンで映えるように選んだお気に入りの逸品だ。
アイメイクは、普段よりも少しだけ大胆に。ゴールドとブラウンのグラデーションで、目元に深みのある陰影をつける。まるで夜空に輝く星のような、ラメ入りのアイシャドウを重ねれば、光の加減で表情が変わる。まつ毛は、根元からしっかりとビューラーでカール。ボリュームマスカラで、まつ毛一本一本を丁寧にコーティングしていく。
頬には、薔薇色のチークを優しくのせる。笑顔が映える、自然な血色感を演出するために、ブラシで何度も丁寧にぼかしていく。唇は、つややかなピンクベージュのリップを選んだ。派手すぎず、でも確実に魅力を引き立ててくれる色。グロスを重ねれば、より一層魅力的な表情に。
メイクを重ねていくたびに、心も少しずつ華やいでいく。普段のオフィスメイクとは一味違う、特別感のある仕上がりに、自分でも思わず微笑んでしまう。化粧をすることは、単なる外見の変化以上の意味がある。それは、新しい自分との出会い、そして予期せぬ素敵な出会いへの準備でもあるのだ。
パーティーでは、きっと素敵な出会いがあるはず。普段は接点のない部署の人たちと、仕事の話以外でも会話を楽しめる貴重な機会。その期待に胸を膨らませながら、最後の仕上げとして、お気に入りの香水を手首と首元にそっとまとう。
ドレッサーの引き出しから、今夜のために用意していた小さなポーチを取り出す。直しメイク用のリップとパウダー、そして香水のミニボトルを忍ばせる。パーティーの途中でも、自信を持って過ごせるように。化粧直しの時間は、自分を見つめ直す大切なひとときでもある。
髪を整え、イヤリングを付け、全身を鏡で確認する。普段の自分とは少し違う、でも確かに自分らしい姿がそこにある。メイクの力で引き出された自信が、表情にも自然と表れている。
パーティー会場に向かう途中、街灯に照らされた車窓に映る自分の姿を見つめる。光の加減で、メイクがより一層輝いて見える。まるで、これから始まる特別な夜への序章のよう。
会場に到着し、エレベーターに乗り込む前に、コンパクトミラーで最後の確認。深呼吸をして、背筋を伸ばす。今夜は、誰かの心に残る存在になれるかもしれない。そんな期待を胸に、パーティー会場のドアを開ける。
華やかな音楽と笑い声が響く会場に一歩踏み入れると、既に多くの同僚たちが集まっている。普段とは違う装いの彼らの姿に、新鮮な驚きを覚える。メイクをしっかりと決めたことで、自然と背筋が伸び、自信を持って会話を楽しむことができる。
パーティーが進むにつれて、化粧台の前で想像していた通りの素敵な出会いが次々と訪れる。普段は話す機会のない上司との気さくな会話、他部署の同期との意気投合、そして思いがけない新たな友人との出会い。
時には、さりげなくポーチからリップを取り出し、化粧直しのために席を外す。その短い時間さえも、自分を見つめ直し、気持ちを整える大切な瞬間となる。鏡に映る自分の表情に、確かな手応えと満足感が浮かんでいる。
パーティーの終わり際、帰り支度をしながら、今夜の思い出が次々と蘇る。丁寧に施したメイクは、自分の内側から溢れる喜びや期待、そして自信を表現するための道具だった。それは単なる化粧以上の、自己表現であり、コミュニケーションのツールでもあったのだ。
家に帰り、慣れた手つきでメイクを落としながら、今夜の出来事を振り返る。クレンジングオイルで溶かし出される化粧の跡には、数々の素敵な思い出が詰まっている。洗顔後の素肌に触れながら、次は誰かと特別な思い出を作れるのだろうかと、また新たな期待が芽生える。
メイクを通じて見つけた自分らしさは、きっとこれからも様々な場面で力を与えてくれるはず。明日からの日常に戻っても、今夜の特別な輝きは心の中で生き続けている。そして、次なる素敵な出会いのために、また新しいコスメを選ぶ楽しみを胸に秘めながら、穏やかな眠りにつくのだった。
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