朝7時、洗面台の前に立つ。今日は逃げられない。
四半期の報告会議がある日って、なぜか目覚ましが鳴る前に目が覚めてしまう。身体が勝手に緊張しているんだろうね。カーテンを開けると、まだ薄暗い空がゆっくりと白んでいくところで、冷たい空気が頬に触れる。11月の朝は容赦ない。
化粧ポーチを開ける音が、いつもより大きく聞こえた気がした。
普段なら10分で済ませるメイクも、今日ばかりは違う。鏡の中の自分と向き合いながら、どんな顔で会議室に入るか考える。プレゼン資料は完璧に仕上げた。数字も洗い出した。でも人間って不思議なもので、最後の最後で「見た目」に頼りたくなるんだよね。弱いと言われればそうかもしれないけど。
下地を塗る指先に、微かに震えがある。ファンデーションは普段より少しだけマットなものを選んだ。照明の強い会議室で、テカリは致命的だ。以前、上司の山田さんが「プレゼンは内容が8割、見た目が2割。でもその2割で最初の印象が決まる」と言っていたのを思い出す。当時は「そんなもんかな」くらいにしか思わなかったけど、今ならわかる。
アイブロウペンシルを持つ手が止まる。眉の形ひとつで、人の印象ってこんなにも変わるんだから面白い。少し角度をつけて、でも威圧的にならないように。この微妙なバランス感覚が難しい。
そういえば去年の夏、取引先との会議で眉毛を描きすぎて、後輩の佐藤に「先輩、今日なんか怖いですよ」って言われたことがあった。あれは恥ずかしかった。トイレに駆け込んで必死に綿棒で修正した記憶。ああいう失敗を重ねて、人は学んでいくんだろうな。
アイシャドウはブラウン系。ラメは控えめに。ここで派手にしてしまうと、話の内容より目元に視線が行ってしまう。相手の注意を資料に向けさせたいから、顔は引き立つけど主張しすぎない、そんな塩梅を探る。グラデーションを作りながら、チップを動かす手つきは、もはや職人のようだと自分で思う。
マスカラを塗る瞬間だけは、呼吸を止める癖がある。
まつ毛が上がると、視界が開ける感じがして好きだ。物理的には何も変わっていないのに、心まで軽くなる気がする。不思議なものだよね、化粧って。リップはヴィヴィアンレーヌの「コーポレートレッド」。名前からして仕事用みたいな色で、初めて見つけたときは笑ってしまった。でもこの色、本当に使える。強すぎず、でも血色が悪く見えない絶妙なトーン。
鏡の中の自分が、少しずつ「会議に出る人」になっていく。
チークは頬骨の高いところに、斜め上に向かって入れる。これをやると、顔全体がリフトアップして見えるんだって、美容系のYouTuberが言っていた。本当かどうかは分からないけど、気持ちの問題として効果はある。プラシーボでもいい、今日は。
最後にハイライトを鼻筋とCゾーンに。光を味方につける、なんて大げさなことは言わないけれど、少しでも明るく見えるならそれでいい。
時計を見ると7時40分。メイクに30分以上かけたのは久しぶりだ。
コーヒーを淹れる余裕はもうない。駅までの道を早歩きで向かいながら、スマホで資料の最終確認をする。数字、グラフ、結論。頭の中で何度もリハーサルを繰り返す。でも不思議と、さっきまでの緊張が少し和らいでいることに気づく。化粧をしている時間が、自分を整える儀式になっていたのかもしれない。
会議は午前10時から。あと2時間ちょっと。
結局、完璧な準備なんてものは存在しないんだろうな。でも、できる限りのことはやった。資料も、服装も、メイクも。あとは、会議室のドアを開けて、自分の言葉で話すだけ。
コスメで作った顔は、きっと私を守ってくれる…と思いたいけど。
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組織名:株式会社スタジオくまかけ / 執筆者名:上辻 敏之


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