窓の外に広がる夕暮れの街並みを背に、私は鏡の前に座った。ドレッサーの上には、いつもより丁寧に並べられたコスメたちが、まるで魔法の道具のように静かに輝いている。今夜のパーティーは、私にとって特別な意味を持つ。新しい出会いが待っているかもしれない、そんな期待が胸の奥でそっと鼓動を早めている。
ベースメイクから始めよう。手に取った化粧下地は、真珠のような光沢を放つクリーム。指先で顔全体に伸ばしていくと、肌が内側から光を放つように変わっていく。この瞬間が好きだ。素の自分から、もう一人の自分へと変わっていく、その境界線に立つ時間。コスメは単なる化粧品ではなく、私という存在を表現するための言葉なのだと思う。
ファンデーションのパフを手に取りながら、今夜の会場の様子を想像する。きらめくシャンデリアの下、グラスを傾ける人々の笑い声。音楽に合わせて揺れるドレスの裾。そして、まだ見ぬ誰かとの視線の交差。期待という名の感情は、不思議なもので、まだ起きていないことに心を躍らせ、頬を紅潮させる力を持っている。
鏡の中の自分を見つめながら、アイシャドウパレットを開く。今夜選んだのは、深いブロンズとゴールドのグラデーション。まぶたに色をのせるたび、目元が立体的になり、表情に深みが増していく。メイクブラシが肌に触れる感触は、まるで自分自身への優しい励ましのよう。「大丈夫、あなたは素敵」と、コスメたちがささやいてくれているような気がする。
アイラインを引く手が、わずかに震える。それは緊張からくるものだけれど、同時に高揚感でもある。パーティーという非日常の空間は、普段の自分とは違う一面を見せられる場所。そこでは、いつもより少しだけ大胆になれる。いつもより少しだけ自分を解放できる。そんな予感が、メイクをする指先に力を与えてくれる。
マスカラのブラシをまつ毛に滑らせながら、過去のパーティーでの出会いを思い出す。何気ない会話から始まった友情。偶然隣に座った人との意外な共通点。人生を変えるような出会いは、いつも予期せぬ形でやってくる。だからこそ、今夜も期待を胸に、最高の自分で臨みたいと思う。コスメは、そんな私の気持ちを形にしてくれる大切なパートナーだ。
チークブラシに淡いローズピンクをとり、頬骨に沿って優しくのせていく。血色が良くなり、表情が一気に華やぐ。鏡の中の自分が、少しずつ自信に満ちた表情になっていくのがわかる。メイクには不思議な力がある。外見を変えるだけでなく、内面にも影響を与え、気持ちまで前向きにしてくれる。
リップスティックを選ぶ時間は、いつも特別だ。今夜は深みのあるレッドを選んだ。唇に色をのせた瞬間、鏡の中の私が完成する。この色は、自分の意志をはっきりと表現する色。新しい出会いに対して、受け身ではなく、能動的に向かっていこうという決意の色。コスメ一つひとつに、こうして意味を込めていく作業が、私は心から好きだ。
髪を整え、イヤリングをつける。最後にパフュームを手首と首筋に軽くつけると、準備は完了だ。立ち上がって、全身鏡の前に立つ。そこに映るのは、日常の私とは少し違う、パーティーのための私。でも、それは偽りの姿ではない。私の中に確かに存在する、もう一つの側面。コスメはそれを引き出し、形にしてくれたのだ。
クラッチバッグにリップとパウダーを入れながら、期待と少しの不安が入り混じった感情を感じる。新しい出会いは、いつも予測不可能だ。素晴らしい出会いになるかもしれないし、何も起こらないかもしれない。でも、その不確かさこそが、人生を豊かにしてくれる。そして、どんな結果になろうとも、今夜の私は最高の状態で臨むことができる。それだけで十分だと思える。
玄関を出る前に、もう一度だけ鏡を見る。コスメによって完成した今夜の私は、自信と期待に満ちている。パーティー会場への道のりを想像しながら、ドアノブに手をかける。きっと素敵な夜になる。そんな予感が、メイクを施した顔に自然な微笑みを浮かばせる。
コスメは、ただ美しくなるための道具ではない。それは自分自身と向き合い、なりたい自分を表現し、新しい可能性に向かって一歩を踏み出す勇気をくれるもの。鏡の前で過ごした時間は、パーティーに向かう準備であると同時に、自分自身を見つめ直す大切な時間でもあった。
さあ、行こう。新しい出会いと、まだ見ぬ物語が待つパーティーへ。コスメが与えてくれた自信を胸に、私は夜の街へと歩き出す。
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組織名：株式会社スタジオくまかけ / 執筆者名：上辻 敏之
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