鏡の前に座り、化粧ポーチの中身を広げながら、今夜のパーティーへの期待に胸が高鳴る。友人から誘われたクリスマスパーティーは、普段会えない人たちとの再会や、新しい出会いの可能性を秘めている。そんな特別な夜に向けて、私は慎重にメイクアイテムを選んでいた。
化粧下地を手に取りながら、過去のパーティーでの思い出が次々と蘇ってくる。初めて参加した社会人パーティーでは、緊張のあまり口紅が少しはみ出してしまい、親切な先輩が直してくれたっけ。あの時の教訓を胸に、今では下地からリップまで、失敗しない順序とテクニックを身につけた。
ファンデーションを肌に馴染ませながら、パーティー会場の照明を想像する。室内の温かみのある照明の下でも、自然光の下でも美しく見えるベースメイクを目指して。パールの入った化粧下地を仕込んで、上からマットなファンデーションをのせる。これなら写真を撮っても、実際に会話をしても、どちらのシーンでも自信が持てる。
アイシャドウパレットを開きながら、今夜出会うかもしれない人たちの顔を思い浮かべる。久しぶりに会う大学時代の友人たち、仕事関係の知人たち、そして、もしかしたら運命の出会いがあるかもしれない。そう考えると、より一層メイクに気合いが入る。
ブラウンのアイシャドウをアイホールにのせながら、目元の印象をどう作るか考える。派手すぎず、でも印象に残る目元。それには、ゴールドのラメを重ねるのが効果的だと経験から学んだ。目尻に向かって色を濃くグラデーションをつけることで、自然な奥行きが生まれる。
マスカラを塗りながら、パーティーでの立ち振る舞いをイメージする。笑顔を絶やさず、でも品位は保ちたい。そのためには、崩れにくいメイクが必須。ウォータープルーフのマスカラで、どんなシーンでも慌てることなく過ごせる準備を整える。
チークを頬に乗せる時、会話が弾むシーンを想像して自然と笑顔になる。血色の良い、健康的な印象を与えるピンクベージュのチークは、どんな照明下でも失敗知らず。頬の高い位置からこめかみに向かってふんわりとグラデーションをつけることで、立体感のある表情が完成する。
リップを選ぶ時が一番慎重になる。今夜のドレスは深いワインレッド。それに合わせて、同系色でも少し明るめのローズレッドを選んだ。食事をしても、会話を楽しんでも、長時間きれいをキープできる落ちにくいタイプ。それでいて唇に優しい保湿成分入りのものを選ぶのは、パーティー経験から得た知恵。
最後にセッティングスプレーをかけながら、全体のバランスを確認する。ナチュラルでありながら、どこか特別感のある仕上がり。それは、普段のメイクとパーティーメイクの絶妙な境界線を攻めた結果。長時間のパーティーでも崩れにくく、でも決して仮面のように不自然にならない。それこそが私の目指す理想のメイク。
髪をセットしながら、時計を見る。あと1時間もすれば、この準備の成果を披露する時。鏡に映る自分の表情に、少しずつ期待と緊張が入り混じってくる。でも、それも特別な夜の醍醐味。化粧ポーチに必要最小限のお直しアイテムを詰めながら、今夜の出会いに思いを馳せる。
ドレスに袖を通し、最後にアクセサリーを身につける。耳元で揺れるピアスが、メイクした顔を引き立てる。首元のネックレスが、デコルテラインを美しく演出する。全ての準備が整い、玄関に向かう足取りが自然と軽くなる。
パーティー会場に向かうタクシーの中で、スマートフォンのカメラで最終確認。照明に照らされた自分の姿に、満足げな微笑みがこぼれる。メイクは私に自信を与えてくれる。それは単なる化粧品の力ではなく、丁寧な準備の過程で育まれる特別な気持ち。
今夜のパーティーで、きっと素敵な出会いがある。そう確信できるのは、念入りに準備を重ねた自分への信頼があるから。鏡の前で過ごした時間は、決して無駄ではない。それは自分を磨き、心を整える大切な儀式。
会場が見えてきた。ライトアップされた建物に、胸の高鳴りが加速する。でも、それは良い意味での緊張感。完璧なメイクが、私の背中を押してくれる。扉を開ける瞬間、特別な夜の始まりを予感させる高揚感に包まれる。さあ、素敵な出会いと思い出作りの時間の始まりだ。
役職名：上辻 敏之
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