私にとってネイルを塗る時間は、まるで小さな魔法の瞬間です。今日も透明感のある薄いピンクのポリッシュを爪先に丁寧に重ねながら、心が静かに整っていくのを感じています。
最近、毎週末の夜に決まってネイルケアの時間を作るようになりました。きっかけは3ヶ月前、仕事のストレスで心が疲れ切っていた時です。何気なくドラッグストアに立ち寄った私の目に飛び込んできたのは、優しい色合いのネイルポリッシュでした。「これなら、私にも似合うかも」。そんな小さな期待を胸に、初めてネイルポリッシュを購入した日のことを、今でも鮮明に覚えています。
家に帰って、おそるおそる爪に色を重ねていく。最初は不器用で、指の周りにはみ出してしまったり、厚塗りになってしまったり。でも不思議なことに、その作業に没頭している間、頭の中がすーっと澄んでいくような感覚がありました。
ネイルを塗る時間は、まさに自分と向き合う特別な瞬間です。スマートフォンの通知も止めて、ただ目の前の爪に集中する。その静寂の中で、自然と一日の出来事を振り返ったり、明日への期待を膨らませたりする時間が生まれます。
最初は単なる気分転換のつもりでしたが、今では大切なセルフケアの習慣になっています。ベースコートを塗る時は「今週も頑張ったね」と自分を労い、カラーを重ねる時は「新しい週も楽しもう」と前を向く。そんな小さな自己対話を重ねることで、心が少しずつ整っていくのを感じます。
そして、この習慣が思いがけない出会いをもたらしてくれました。先日、お気に入りのカフェで仕事をしていた時のこと。テーブルに置いた手元を見た隣席の女性が、「そのネイル、素敵ですね」と話しかけてきたのです。彼女もネイル好きで、自分でケアをすることの大切さを知っている人でした。
その後、私たちは週末のネイルケア時間について語り合い、お互いの好きなカラーや相性の良いブランドについて情報交換をしました。「ネイルを塗る時間って、まるで瞑想しているみたい」という彼女の言葉に、強く共感したのを覚えています。
今では彼女とSNSで繋がり、時々ネイルデザインの写真を送り合っています。「今週はこんな色に挑戦してみました」「この組み合わせ、素敵ですね」。そんなやり取りが、日常に小さな楽しみを加えてくれています。
ネイルケアを始めてから、他の習慣も少しずつ変わってきました。朝は少し早起きして、丁寧にハンドクリームを塗るようになりました。週末には好きな香りのバスソルトを入れて、ゆっくりお風呂に浸かります。自分を大切にする時間を持つことで、周りの人々への気遣いも自然と増えていったように思います。
最近では、オフィスでも「その色、素敵ですね」「どんなケア方法をしているんですか?」と声をかけられることが増えました。ネイルという小さな共通点から、新しい会話が生まれ、人との距離が近づいていくのを感じます。
そして何より嬉しいのは、爪を見るたびに心が穏やかになれること。例えば仕事で緊張する場面があっても、手元の優しい色合いを見ると「大丈夫、落ち着いて」と自分に言い聞かせることができます。まるで、いつも自分を応援してくれる友達がそばにいるような安心感があります。
ネイルケアの時間は、決して派手な自己主張ではありません。むしろ、静かに自分と向き合い、心を整える大切な儀式のようなものです。一週間の疲れを癒し、新しい週への期待を膨らませる。そんな特別な時間が、今の私には欠かせないものになっています。
これから寒い季節を迎え、手元のケアがより重要になってきます。乾燥から爪を守るためのケアオイルを新調したり、秋冬らしい深みのある色に挑戦したり。季節の変化とともに、ネイルケアの楽しみ方も少しずつ変化していくのが素敵ですね。
今夜も、いつものように窓際の小さな椅子に座り、お気に入りのアロマキャンドルの灯りの中でネイルケアの時間を過ごします。この静かな時間が、また新しい気づきや出会いをもたらしてくれることを、密かに期待しながら。
爪先に映る柔らかな光を見つめながら、私は考えます。人生の幸せは、きっとこんな小さな習慣の積み重ねの中にあるのだと。そして、自分を大切にする時間を持つことが、誰かとの素敵な出会いにつながっていくのだと。
明日も、この手元から優しい気持ちが広がっていきますように。そんな願いを込めて、今日も丁寧にネイルポリッシュを重ねていきます。
役職名:上辻 敏之


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