窓の外は夕暮れ時。今夜は待ちに待った年に一度の社内パーティー。鏡の前に座り、化粧ポーチから次々とコスメを取り出していく私の手は、少し震えている。今年入社してきた新入社員の私にとって、これが初めての大きなイベント。普段のオフィスでは見られない、華やかな社交の場。そこには、きっと素敵な出会いが待っているはず。
メイクブラシを手に取りながら、今朝までYouTubeで研究した特別メイクの手順を思い出す。ベースメイクは、いつもより少し明るめのファンデーションを選んだ。パーティー会場の照明は意外と暗いことが多いから、顔色が暗く沈んで見えないように。そう、ビューティーアドバイザーの友人が教えてくれた。
まずは、化粧下地でお肌をなめらかに整える。パール入りのものを選んだのは、上品な艶感を演出するため。光の加減で自然な立体感が生まれる。そして、リキッドファンデーションを丁寧に馴染ませていく。今日のために新調した、パーティーシーンにぴったりの軽やかなテクスチャー。つけた瞬間から、肌が喜んでいるのを感じる。
コンシーラーで気になる部分をカバーしながら、頬に薄くピンクのクリームチークをのせる。まるで恋に落ちたように、自然な血色感が生まれる。パウダーで優しく押さえれば、長時間のパーティーでも崩れにくい土台の完成。
アイメイクは、今日の主役。普段よりも華やかに、でも派手すぎない絶妙なバランスを心がける。アイシャドウパレットから、シャンパンゴールドのベースカラーを瞼全体にのせ、アウトラインにはディープブラウンを重ねて奥行きを出す。目尻に向かってグラデーションをつけることで、大人っぽい色気が生まれる。
アイラインは、目の形に沿って繊細に。ブラウンのペンシルライナーで優しく縁取り、黒のリキッドライナーで目尻を少しだけ長めに。まつげはビューラーでしっかりとカール。上向きまつげが、目元をパッと明るく見せてくれる。マスカラは、ボリュームタイプとロングタイプを組み合わせて。根元からしっかりと塗り重ねれば、まるでつけまつげのような存在感。
眉毛は、パウダーとペンシルを使い分けて自然な立体感を。今日は少しだけアーチを強調して、表情を華やかに見せるように。リップは、迷った末に選んだローズピンク。派手すぎず、でも存在感のある色。グロスを重ねれば、会話を楽しむたびに唇が艶やかに輝く。
鏡に映る自分の顔に、少しずつ自信が湧いてくる。メイクの力って本当に素晴らしい。ただ化粧をするだけじゃない。心まで前向きになれる、特別な儀式のよう。
香水は、去年のクリスマスに自分へのご褒美として買った、お気に入りのフローラル系。手首と首元にそっとスプレーすれば、歩くたびに優しい香りが漂う。これで完璧。いつもより少し背筋が伸びる気がする。
ドレスに袖を通し、お気に入りのネックレスを首元に。シルバーの細かな輝きが、首元で静かに揺れる。鏡の中の私は、いつもより少しだけ大人びて見える。そう、今夜は特別な夜。新しい出会いが、きっと待っているはず。
スマートフォンの画面を確認すると、もうすぐ待ち合わせの時間。友人からは「今日は絶対に素敵な出会いがあるよ!」というメッセージが届いている。胸の高鳴りを感じながら、最後にリップを軽く押さえる。
バッグの中身を確認する。コンパクトミラー、リップ、パウダー。化粧直しのアイテムは万全。長時間のパーティーでも、美しさをキープできる準備は整った。深呼吸をして、玄関に向かう足取りは軽やか。
エレベーターの中で、もう一度だけ全身を確認。大丈夫、完璧。今夜は自分らしく、でも普段よりちょっとだけ特別な私でいよう。パーティー会場で交わされる会話、新しい出会い、予期せぬ展開。すべてが楽しみで仕方ない。
タクシーに乗り込みながら、ふと空を見上げる。夕暮れの空が、徐々に夜の顔に変わっていく。街灯が一つずつ灯り始め、都会の夜が始まろうとしている。今夜は、きっと素敵な夜になる。そう確信しながら、パーティー会場のホテルの住所を告げる。
化粧をする時間は、単なる準備ではない。期待と希望を詰め込む、特別な時間。メイクの一つ一つに、tonight will be specialという想いを込めて。鏡の前で過ごした時間が、きっと今夜の自信になる。
そう、今夜の私は、いつもより輝いている。パーティーという非日常の空間で、新しい出会いという可能性に胸を躍らせながら。メイクの力を借りて、でも本当の私らしさは失わずに。特別な夜に向かって、タクシーは優雅に走り出す。華やかな夜の始まりに、心はもう準備万端。さあ、素敵な物語の幕が上がろうとしている。
組織名:株式会社スタジオくまかけ / 執筆者名:上辻 敏之


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