鏡の前に立ち、今夜のパーティーに向けて準備を始める時間は、まるで自分だけの特別な儀式のよう。クローゼットから選んだドレスを眺めながら、次に手に取るのはお気に入りのコスメたち。けれど今日、私が最も心を込めて選びたいのは、目に見えないけれど確かに存在を主張する「香り」だった。
香りは言葉よりも雄弁に、私たちの個性や気持ちを表現してくれる。フレグランスコスメを選ぶとき、それはただ良い匂いを纏うという行為以上の意味を持つ。パーティーという華やかな場所で、どんな自分を演出したいのか。そんな問いかけに答えるように、私はドレッサーに並ぶ香りのコスメたちと対話を始める。
今夜のパーティーは親しい友人たちとの集まり。久しぶりに会う人もいれば、いつも顔を合わせる仲間もいる。そんな温かな雰囲気の中で、私はやさしい印象を残したいと思った。強すぎる香りではなく、近づいたときにふわりと感じられる、そんなやさしい香りが今の気分にぴったりだ。
コスメカウンターで出会ったピーチとホワイトムスクの香りは、まさに理想的だった。最初にふわりと広がる果実の甘さは親しみやすく、その後に続くムスクのやさしい温かみが、落ち着いた大人の雰囲気を醸し出してくれる。この香りなら、会話を楽しむ距離感でちょうど良く香り、相手を不快にさせることもない。
TPOを考えた香り選びは、実は現代を生きる私たちにとって欠かせないマナーのひとつ。オフィスには控えめなシトラス系、デートにはロマンティックなフローラル系、そして今夜のようなカジュアルなパーティーには親しみやすいフルーティー系。シーンに合わせて香りを使い分けることで、周囲への配慮と自分らしさの両立が叶う。
最近のフレグランスコスメは、従来の香水だけでなく、ヘアミストやボディクリーム、ハンドクリームなど、さまざまな形で展開されている。私が特に気に入っているのは、重ね付けができるレイヤードフレグランスのシリーズ。同じ香りのボディローションとヘアミストを組み合わせることで、やさしく長続きする香りの層を作り出せる。これなら、パーティーの途中で香りが消えてしまう心配もない。
香りのコスメを選ぶ楽しみは、それを纏った自分を想像する時間にもある。鏡に映る自分に、選んだ香りが加わったらどんな印象になるだろう。ドレスの色、アクセサリーの輝き、メイクの仕上がり、そして香り。これらすべてが調和して、今夜の私が完成する。
パーティー会場に到着すれば、きっと様々な香りが交差する。誰かのエレガントな香り、別の誰かのスパイシーな香り。その中で、私のやさしい香りは、私らしさを静かに主張してくれるはず。「その香り、素敵ね」と言われたとき、それは単なる香りへの賛辞ではなく、私という存在全体への好意的な反応なのだと感じる。
香りを選ぶ時間は、自分自身と向き合う大切な時間でもある。今日はどんな気分なのか、誰と会うのか、どんな印象を残したいのか。そんなことを考えながら香りを選ぶプロセスは、メイクをするのと同じくらい、いやそれ以上に、自分を表現する創造的な行為だと思う。
コスメポーチの中に、選んだ香りのロールオンタイプを忍ばせる。パーティーの途中で、さりげなく香りを纏い直すことができる。手首の内側、耳の後ろ、そっと香りを重ねる仕草さえも、女性らしい優雅さを演出してくれる。
今夜のパーティーが終わって家に帰る頃、服に残った香りが一日の思い出を運んでくれる。楽しかった会話、美味しかった料理、心地よかった音楽。そのすべてが香りと共に記憶に刻まれる。香りには、そんな特別な力がある。
だから私は、これからも大切なシーンの前には、必ず香りのコスメを選ぶ時間を持つだろう。それは単なる身支度ではなく、自分らしさを纏い、TPOを意識しながら、やさしく周囲に溶け込んでいくための、私なりの準備なのだから。鏡の前で最後の仕上げに香りを纏うとき、今夜への期待が胸いっぱいに広がっていく。
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組織名：株式会社スタジオくまかけ / 執筆者名：上辻 敏之
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