窓の外では十一月の夕暮れが静かに街を染めていた。オレンジ色の光が部屋の白い壁に斜めに差し込み、鏡台の上に置かれたコスメたちがきらきらと反射している。今夜のパーティーは七時から。まだ二時間ほどあるけれど、私はもう鏡の前に座っていた。
ベースメイクを丁寧に整えながら、ふと子どもの頃のことを思い出す。母が出かける前に鏡台の前で化粧をしている姿を、私はいつも廊下の端から眺めていた。小さな手で口紅を握りしめて、こっそり唇に塗ってみたことがある。結果は当然、真っ赤な失敗作。母に笑われて、でもそのときの高揚感だけは今でも覚えている。化粧をするという行為には、いつだって何かが始まる予感があった。
アイシャドウのパレットを開く。今日選んだのは、ベルジュ・ドゥ・ソワールというブランドの限定色。深いボルドーとゴールドが混ざり合った、少し大胆な色味だ。ブラシを持つ手が少しだけ震える。それは緊張というよりも、期待に似た感覚だった。パーティーには久しぶりに会う友人もいるし、初めて顔を合わせる人もいるらしい。どんな会話が生まれるのか、どんな笑い声が響くのか、想像するだけで胸が少し高鳴る。
鏡に映る自分の顔を見つめながら、まぶたに色をのせていく。ゆっくりと、丁寧に。焦る必要はない。こういう時間こそが、実は一番贅沢なのかもしれない。誰にも邪魔されず、自分だけのために手を動かす時間。コスメひとつひとつに触れるたび、今夜への想いが少しずつ形になっていくような気がした。
チークを頬にふわりとのせたとき、ふと鏡の端に映った時計が目に入った。あれ、もう六時半を回っている。思ったより時間が経っていた。急いでリップを手に取ろうとして、うっかりブラシを床に落としてしまう。コロコロと転がるブラシを追いかけながら、自分でも少し笑ってしまった。こんなに落ち着いて準備していたつもりだったのに、結局いつもの私だ。
拾い上げたブラシを軽く拭いて、改めてリップを選ぶ。今日は少し明るめのローズピンク。光の加減で色味が変わって見えるこのリップは、私のお気に入りだ。唇に滑らせると、鏡の中の自分が少しだけ華やいで見える。不思議なもので、コスメをひとつ足すたびに、気持ちも一緒に変わっていくのだ。
部屋の中にはほのかに香水の香りが漂っている。柑橘系のトップノートが徐々に甘いフローラルへと変化していく、そんな繊細な香り。この香りを纏うと、いつもより少しだけ背筋が伸びるような気がする。出会いというのは、いつだって予測できない。誰かの何気ない一言が心に残ることもあるし、ふとした笑顔が記憶に刻まれることもある。だからこそ、自分を整える時間は大切にしたかった。
鏡の前で最後の確認をする。髪の毛の流れ、イヤリングのバランス、服のシワ。細かいところまで見ていると、完璧を求めているわけではないのに、つい気になってしまう。でも、それでいいのだと思う。この緊張感も、期待も、全部ひっくるめて今夜の一部なのだから。
窓の外はもうすっかり暗くなっていた。街灯が一つ、また一つと灯り始めている。部屋の照明を少し落として、もう一度鏡を見る。光の加減が変わると、コスメの色味も違って見えた。きっと会場の照明の下では、また違った印象になるのだろう。
バッグの中身を確認する。リップ、ハンカチ、スマートフォン。必要なものは揃っている。コートを羽織って、玄関に向かう。ドアノブに手をかけたとき、ふと立ち止まった。深呼吸をひとつ。冷たい空気が肺に入ってくる。
外に出ると、冬の始まりを告げる冷たい風が頬を撫でた。でも不思議と寒さは感じなかった。胸の中にある温かな期待が、体全体を包んでいるような気がしたから。
まだ見ぬ出会いが待っている。どんな言葉が交わされるのか、どんな瞬間が心に残るのか、それは誰にもわからない。でも、だからこそ、この一歩が愛おしい。コスメを纏い、想いを馳せ、夜の街へと歩き出す。今夜という物語は、もう始まっている。
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組織名:株式会社スタジオくまかけ / 執筆者名:上辻 敏之


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