ネイルを塗るときって、なんだか世界が少しだけ優しくなる気がする。
今日は朝からなんとなく元気で、特に予定があるわけでもないのに、引き出しの奥に眠っていたネイルの瓶を取り出してみた。ラベルが少し剥がれかけている、たぶん2年くらい前に買ったやつ。色はくすんだピンクベージュで、派手じゃないけど、爪先に乗せるとちゃんと「塗ってます」って顔をする、そういう色。
蓋を開けた瞬間の、あの独特な匂い。ツンとするんだけど嫌いじゃなくて、むしろこの匂いがすると「あ、今から私の時間だな」って思える。窓を少し開けて、冷たい空気を部屋に入れながら、右手から塗り始める。利き手じゃない左手で筆を持つから、最初の一塗りはいつもはみ出すんだけど、今日はなぜか上手くいった。こういう日ってあるよね。理由なんてないのに、全部がちょっとずつ噛み合う日。
ネイルを塗っているときの静けさが好きだ。テレビもつけない、音楽もかけない。ただ、筆先が爪の表面を滑る、あのかすかな音だけが聞こえる空間。息を止めて、爪の端から端まで一気に引く。失敗したら除光液で拭けばいいんだけど、できれば一発で決めたい。そういう小さな緊張感が、日常にちょうどいいメリハリをくれる気がしてる。
そういえば、大学生の頃に友達とコスメショップ巡りをしていた時期があった。
あれは確か秋口で、就活も終わって暇を持て余していた頃。友達が「新しいブランドができたらしい」って言って、二人で原宿まで出かけた。店の名前、なんだっけな。「ルチア」だったかな。小さな店で、奥にネイルコーナーがあって、試し塗り用の紙が山積みになってた。私たちは30分くらいかけて、ひたすら紙に色を塗りまくった。店員さん、たぶん呆れてたと思う。結局何も買わずに出てきて、カフェで「あの青みピンク可愛かったよね」とか言い合ってた。今思えば、あの時間自体が出会いだったのかもしれない。色との、場所との、それから自分の好みとの。
左手が乾くまで、ぼんやり窓の外を眺める。向かいのマンションのベランダに、誰かが干した白いシーツが揺れてる。風が少し強いみたいで、シーツが膨らんだり縮んだりを繰り返している。そういうのを見ていると、時間の感覚がふわっとなくなる。今が午前なのか午後なのかも、どうでもよくなってくる。
ネイルって不思議で、塗ったからといって誰かに褒められるわけでもないし、自分の生活が劇的に変わるわけでもない。でも、ふとした瞬間に自分の手が視界に入ったとき、「あ、ちゃんとしてる」って思えるのが嬉しい。キーボードを打つとき、コップを持つとき、電車のつり革を掴むとき。そのたびに、ほんの少しだけ気分が上がる。
実は私、ネイルサロンに行ったことがない。周りの友達は定期的に通ってて、「ジェルネイルは持ちがいいよ」とか教えてくれるんだけど、なんとなく踏み出せないでいる。予約するのが面倒とか、お金がかかるとか、そういう理由もあるけど、一番大きいのは「自分で塗る時間が好きだから」かもしれない。誰かにやってもらうより、自分のペースで、自分の好きな色を選んで、失敗してもいいからやってみる。そのプロセス全体が、私にとってのネイルなんだと思う。
右手を塗り終えて、今度は左手。利き手で塗るから、こっちはスムーズ。でも油断すると雑になるから、ちゃんと集中する。爪の根元ギリギリから塗り始めて、先端まで一息に。光の加減で、ピンクが少しオレンジっぽく見えたり、ベージュに近く見えたりする。この曖昧さも、気に入ってる理由のひとつ。
コスメって、結局のところ出会いの連続なんだと思う。店で見かけた瞬間、手に取った瞬間、実際に使ってみた瞬間。そのどこかで「あ、これいいかも」って感じる、その感覚。それは恋愛とか友情とは違うけど、確かに何かとの出会いではある。自分の中の「好き」と出会う瞬間、と言ってもいいかもしれない。
全部塗り終わって、両手を膝の上に置いて眺める。完璧じゃないけど、悪くない。右手の薬指だけ少しはみ出てるけど、まあいいか。乾くまでの間、何もできないこの時間も含めて、ネイルを塗るっていう行為なんだろうな。
窓の外では、さっきのシーツがまだ揺れている。私の爪も、静かに乾いていく。
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組織名:株式会社スタジオくまかけ / 執筆者名:上辻 敏之


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