洗面所の蛍光灯が、いつもより白く感じる。
パーティーの招待状が届いたのは先週の木曜日だった。差出人は大学時代の友人で、年に一度だけこういう集まりを企画する人なんだけど、正直なところ毎回行くかどうか迷う。人混みが得意じゃないし、知らない人と話すのも緊張するし。でも今年は何となく、行ってみようかなと思った。理由はよくわからない。ただ鏡に映る自分の顔が、少し退屈そうに見えたから、かもしれない。
化粧ポーチを開けると、半年前に買ったきり使っていないアイシャドウが出てきた。ブランド名は「ルナエール」とか何とか、雑誌で見かけて衝動買いしたやつ。パッケージは綺麗なんだけど、色が思ったより派手で結局普段使いできなくて。パーティーならいいかな、と思いながらブラシを手に取る。
鏡越しに自分の目を見つめていると、変な感覚になる。この顔で誰かと出会うのか、と思うと少しだけ緊張してくる。期待というほど大げさなものじゃないけれど、何かが変わるかもしれないという予感みたいなものは確かにある。アイシャドウをまぶたに滑らせながら、会場にはどんな人がいるんだろうとぼんやり考えた。
そういえば去年のパーティーでは、開始30分で帰りたくなって、トイレに15分くらい籠もってた。あれは失敗だった。
リップを選ぶ段階になって、また迷う。普段使っているベージュ系にするか、それとも少し冒険して赤みの強いやつにするか。赤いリップを塗った自分を想像してみる。似合うかどうかは分からないけれど、少なくとも「いつもの自分」ではない。それでいいような気がした。キャップを開けると、かすかに甘い香りがする。この匂い、嫌いじゃない。
会場は都心のレストランらしい。夜7時スタートで、ドレスコードは「カジュアルエレガント」。曖昧すぎる指定だと思うけど、まあ何とかなるだろう。鏡の中の自分は、まだ完成していない。チークを入れて、ハイライトを足して、マスカラを重ねて。一つ一つの動作が、まるで誰かになるための儀式みたいに感じられる。
本当は出会いなんて期待していないのかもしれない。ただ、いつもと違う自分でいられる時間が欲しいだけなのかも。パーティーという非日常の中で、少しだけ別の誰かのふりをする。それが楽しいのかどうかも、まだ分からないけど。
ファンデーションのスポンジを洗っていなかったことに今更気づいて、ちょっと焦った。
仕上げにフェイスパウダーをはたく。ブラシが頬に触れる感触が心地いい。鏡の中の自分は、30分前よりも少しだけ自信ありげに見える。錯覚かもしれないけれど、化粧ってそういうものなんだと思う。顔に色を重ねることで、気持ちも少しずつ変わっていく。
時計を見ると、まだ2時間ある。早く準備しすぎた。コスメを片付けながら、会場で誰と話すことになるんだろうと考える。気の合う人がいればいいけど、いなくても別にいい。ただ、この鏡の前で作り上げた「今日の自分」が、誰かの記憶に残ればそれでいいのかもしれない。
洗面所の蛍光灯を消して、部屋に戻る。クローゼットから服を選ばなきゃいけないんだけど、それはまた別の物語。
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組織名:株式会社スタジオくまかけ / 執筆者名:上辻 敏之


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