今夜のパーティーまであと三時間。クローゼットから引っ張り出したワンピースはアイロンがけ済みで、靴も磨いた。問題は香りだ。
デパートのコスメフロアに立つと、いつも思考が停止する。照明が妙に明るくて、どの香水も試香紙では同じような匂いに感じてしまう。左手首にはすでに三種類ほど吹きかけてしまって、もう何がなんだか分からない状態。BAさんが「少しお時間を置かれると香りが落ち着きますよ」って優しく言ってくれるんだけど、そんな時間はないんです、今夜なんです、って心の中で叫んでる。
TPOって言葉、昔は服装のことだと思ってたけど、香りにも確実にある。会社の飲み会に甘ったるいバニラ系をつけていったときの失敗は今でも思い出したくない。エレベーターで部長が「…すごい匂いだね」ってぼそっと言ったあの瞬間、地面に吸い込まれたかった。
今回のパーティーは友人の結婚前のお祝い会で、会場はちょっとしゃれたイタリアンレストラン。料理の香りを邪魔しちゃいけないし、でも地味すぎるのも寂しい。やさしい香りがいいんだろうけど、やさしいって具体的にどういうこと? 石鹸系? 柑橘系? それともほんのり甘いフローラル?
ふと、高校時代の友達を思い出した。彼女はいつも同じ香水をつけてて、廊下ですれ違っただけで「あ、今ミホが通った」って分かるくらいだった。別にそれが良い香りとか悪い香りとかじゃなくて、ただ彼女の香りだった。ああいうの、憧れるんだよね。自分の定番を持ってる人。
でも私はいつも迷う。
カウンターに並ぶボトルを眺めながら、ラベンダーとベルガモットの組み合わせを試す。これは…悪くない。でも物足りない気もする。次にローズとムスクのブレンド。うーん、ちょっと大人っぽすぎるかも。今夜の主役は友達だし、私が目立ちすぎるのは違う。
そういえば去年の秋、パリの小さな香水店で買った「エトワール・ドゥ・ニュイ」っていうブランドの香水がまだ家にあったはず。あれ、つけた瞬間はちょっと強めなんだけど、三十分くらい経つとふわっと柔らかくなるんだよね。肌の温度で変化するタイプ。でも今から家に取りに帰る時間はない。
BAさんが新しいサンプルを差し出してくれた。「こちら、今月入ったばかりで、夕方から夜にかけてのシーンにおすすめなんです」。吹きかけてもらうと、最初にグリーンティーみたいな清涼感があって、その後にほんのり白い花の香りが追いかけてくる。嫌味じゃない。これかもしれない。
「これ、時間が経つとどう変化しますか?」って聞いたら、「ラストノートはサンダルウッドとアンバーで、少し温かみが出ます」とのこと。温かみ。それ、今夜欲しかったやつだ。冬の夜のパーティーに、冷たすぎる香りは合わない気がしてた。
レジに向かいながら、ふと時計を見る。あと二時間半。家に帰ってシャワー浴びて、メイクして、髪をセットして…ギリギリだ。
香水のボトルを紙袋に入れてもらいながら、「正解だったかな」なんて考えてる自分がいる。でも香りに正解なんてないのかもしれない。その日の気分、会う人、場所、時間帯。全部が組み合わさって、その瞬間だけの空気ができる。
エスカレーターを降りながら、紙袋の中のボトルを確認する。小さくて、でも今夜の私にとっては大事な相棒。帰りの電車の中でもう一度手首で香りを確かめて、「うん、これでいこう」って思えたらいいな。
パーティー、楽しみなような、緊張するような。
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組織名:株式会社スタジオくまかけ / 執筆者名:上辻 敏之

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