窓から差し込む五月の光が、フローリングの上にゆるやかな四角形を描いていた。午後二時すぎ。風はほとんどなく、ただカーテンの端だけがときおり小さく揺れる、そういう静かな午後だった。
テーブルの上に並べたのは、ネイルポリッシュが三本。
今年の春夏トレンドとして話題の、透明感あふれるラベンダーと、白を混ぜたような優しいチョークピンク
、それからずっと気になっていたバターイエロー。どれにしようか迷いながら、結局三本全部を開けてしまった。こういうとき、人はたいてい最初に手に取ったものを選ぶ。わかっていても、並べずにはいられない。
ラベンダーのキャップを外すと、かすかに甘い溶剤の香りが鼻をかすめた。子どもの頃、母の化粧台の引き出しを開けるといつもこの匂いがした。触ってはいけないとわかっていながら、小さな瓶をそっと持ち上げて光に透かして見ていた、あの感覚。コスメというものが、ずっと「特別な何か」に見えていた時期の記憶だ。
ブラシを爪に乗せる瞬間が好きだ。すうっと引いたとき、色が薄く広がっていく。
シアーなカラーは塗る回数によって濃さを調整できるのが魅力で、一度塗りならほんのり色づく程度、二〜三度塗りでしっかりとした発色になる。
今日はあえて薄めに、一度だけ。指先が少し透けて見えるくらいがちょうどいい気がした。
今年のトレンドデザインとして、粘土ジェルを使った立体的なお花や、クリア素材を活かしたぷっくりフラワーが大人気
だと、先日読んだ記事に書いてあった。でも今日はセルフで、シンプルに塗るだけでいい。凝ったアートも好きだけれど、こういう何も考えずにただ色を乗せていく時間が、一番静かな心に近づける気がする。
静かな心、という言葉を最近よく考える。騒がしい毎日の中で、ふと手を止めて、ネイルを塗っているこの十五分だけは、何も急がなくていい。乾くのを待つあいだ、スマホも触れないし、家事もできない。強制的に「何もしない時間」が生まれる。それが、案外ありがたかったりする。
薬指だけ、架空のコスメブランド「Lune Pétale(リュンヌ・ペタル)」のバターイエローを重ねてみた。
柔らかなバターイエローを組み合わせることで、攻めすぎない大人かわいい仕上がりになる
という話は本当で、ラベンダーの隣に置くと、思いのほか馴染んだ。むしろ、この組み合わせは想定外にかわいい。ちょっと得した気分。
乾かしながら、ぼんやりと窓の外を見ていた。電線に鳥が一羽とまって、また飛んでいった。それだけのことなのに、なぜか目で追ってしまう。こういう瞬間に出会うと、日常の中に小さな出会いがあるものだと思う。鳥との出会いなんて大げさかもしれないけれど、ネイルを塗っていなければ、きっと気づかなかった。
ちなみに、乾く前に右手の薬指を誤ってテーブルに当ててしまい、せっかくのバターイエローに小さな凹みができた。心の中で「あ」と思ったが、声には出さなかった。重ね塗りで修正しながら、まあこれもセルフネイルの醍醐味だと、無理やり納得した。
2026年春のネイルトレンドに共通するのは、透明感のあるカラーリングと、作り込みすぎない抜け感。
そう、完璧じゃなくていい。少しムラがあっても、一本だけ違う色でも。指先を自分の好きな色に染めるというのは、それだけで今日という日を少し特別にする行為だと思う。
ネイルが完全に乾いたころ、部屋の光の角度が変わっていた。五月の午後は、思ったより早く傾く。ラベンダーとバターイエローの指先が、窓の光を受けてほんのり輝いていた。静かで、小さくて、でも確かに、今日だけの色だった。
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組織名:株式会社スタジオくまかけ / 執筆者名:上辻 敏之

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