洗面台の前に立つと、朝の光がカーテン越しにうっすら差し込んでいた。5月の朝特有の、少し湿った空気と、窓の外から聞こえてくる自転車のブレーキ音。彼女はポーチのファスナーをゆっくり開けながら、今日どんな顔で学校へ行くかを、静かに考えていた。
2026年のメイクトレンドは「作り込まずナチュラルで勝負する」という時代の流れから生まれている。
そのことを、彼女はたぶん言葉では知らない。でも、感覚として、もうわかっている。厚く塗り重ねた肌より、素肌のざらっとした質感が少し透けるくらいのほうが、なんとなく好きだと思っていた。
コンシーラーを薬指の腹で軽く叩く。冷たいテクスチャーが指先に広がって、ほんの少しだけ目が覚める。鼻の頭の赤みだけをそっと消して、あとはそのまま。
ファンデーションを最小限に抑えて素肌の質感を活かす薄づき仕上げが主流で、「全部完璧に仕上げる」よりも「どこか1つだけ目立たせる」バランス感覚こそが今らしさ
だと、どこかで読んだ気がする。そういうことか、と鏡を見ながら思った。
チークは、架空のコスメブランド「ルミエール・ロゼ」のミルキーピンク。頬骨のいちばん高いところに、ブラシでふわりと乗せる。粉が舞うたびに、かすかに甘い香りがする。バニラとローズを混ぜたような、でもどちらでもないような、不思議な香り。昔、母親の化粧台の引き出しをこっそり開けたとき、似た匂いがした。あのとき何歳だったろう。たぶん小学校低学年。チークブラシを握って、鏡の前でひとり得意げになっていたら、母に見つかって笑われた。恥ずかしいというより、なぜか誇らしかった。
ナチュラルに仕上げたい場合は、ラメ配合のものを全体に使うより、マットアイシャドウで仕上げてワンポイントでラメをのせるくらいがちょうどいい。
今日もそうする。アイシャドウのパレットを開いて、いちばん左の薄いベージュを二重幅にのせる。ブラシが目蓋に触れる感触は、羽根のように軽い。次に、中央のラメをごく少量、黒目の上にだけ重ねた。鏡の中の目が、ふっと明るくなる。
女子高生のメイクは、よく「バレないように」という言葉と一緒に語られる。
校則によってはナチュラルメイクが可能な場合もあり、目元だけとか部分的にメイクをするのもおすすめ
とされているけれど、彼女にとってそれは「隠す技術」ではなく、「自分を整える儀式」に近い。毎朝、この10分があるかないかで、一日の始まりがまるで違う。
リップを選ぶ段階で、少し迷った。ピンクにしようか、コーラルにしようか。結局コーラルを選んで、唇に引いた瞬間——あ、これだ、と思った。なぜかはうまく言えない。ただ、鏡の中の自分が「今日の自分」になった気がした。ちなみに、キャップをしめ忘れたままポーチに戻してしまい、数秒後に気づいてそっと直した。誰も見ていないのに、なぜか少し照れた。
肌へと溶け込み、霞のように発色するカラーが心を惹きつける季節。
ピンクやコーラルのニュアンスが顔全体に散りばめられると、一気に明るい表情が生まれる。それはトレンドだからではなく、自分が少し好きになれる顔だから、続けている。
メイクは力だ、と思う。誰かに見せるためだけじゃない。自分が自分の顔と向き合う、静かな時間。女子高生だって、ナチュラルメイクを通して、毎朝そういう時間を持っている。コスメひとつひとつに、小さな意志が宿っている。洗面台の前の10分間は、今日をどう生きるかを決める、誰にも邪魔されない時間だった。
#曜日コスメ
#今日のメイク
#メイクのある暮らし
#コスメ好きさんと繋がりたい
#毎日メイク
#気分で選ぶコスメ
#週末メイク
#デパコスとプチプラ
#コスメレビュー
#美容好きと繋がりたい
#日刊ブログメーカー
組織名:株式会社スタジオくまかけ / 執筆者名:上辻 敏之

コメント