4月の夜は、まだ少しだけ肌寒い。窓の外から桜が散りかけているのが見える、そんな夜だった。明日はパーティーだと思うと、なんとなく眠れなくて、気づいたら化粧台の前に座っていた。
鏡の中の自分と目が合う。素顔のままの自分は、いつ見ても少しだけ他人みたいだ。
コスメポーチを開ける。中にはいくつかのリップと、ハイライト、それからずっと使いきれずにいるアイシャドウのパレット。ブランド名は「ルミエ・ドゥ・ソワール」——パリ発のコスメブランドで、友人にもらったもの。蓋を開けると、ほんのり甘くてバニラに近い香りが漂う。小さな贅沢、とはこういうことを言うのかもしれない。
ファンデーションを薄く伸ばしながら、明日のことを考える。パーティーには、しばらく会っていない顔ぶれも来るらしい。出会いがあるかもしれない、なんて言葉が頭をよぎって、自分でも少し照れた。出会い、というのはいつだって、期待と不安が半分ずつ混ざったような感触を連れてくる。
アイシャドウのブラシを手に取る。今年のトレンドはシルバーやパールを効かせた目元らしい。そういえば子どもの頃、母の化粧台に並んだキラキラしたコスメに触れて、こっそり試してみたことがある。目の周りが真っ青になって、慌てて拭いたのに全然落ちなくて、夕飯のとき父に「お化けみたい」と言われたあの日。笑えるような、笑えないような。それでも、あの夜から「自分を変える道具」としてのコスメに、妙な親しみを感じるようになった気がする。
ブラシを走らせると、ラメが細かく光る。蛍光灯の白い光の下では少し派手に見えるけれど、パーティー会場の照明の下ではきっとちょうどいい。光というのは正直で、その場の空気を全部変えてしまう。
リップを選ぶのが一番時間がかかる。ローズ系にするか、少し深みのあるベリーにするか。何度か唇に乗せては拭いて、また乗せて。——ふと気づいたら、ティッシュの山がポーチの隣に積み上がっていた。誰かに見られたら笑われそうな光景だけど、これが私のいつものパターンだ。
結局、選んだのはくすみピンクのリップ。主張しすぎず、でも何もしていないわけでもない、そういう色。
鏡の中の自分が、少しだけ変わって見える。素顔のときとは違う目で、自分を見ている。パーティーへの期待が、じわりと胸の中に広がっていく。出会いというのは、準備をした人のところにやってくるものだと、誰かが言っていた。本当かどうかは分からないけれど、今夜の私はそれを信じたい気分だった。
コスメポーチを閉じる。香りが少し残る。窓の外では、4月の夜風が桜の花びらをひとつ、静かに運んでいった。
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組織名:株式会社スタジオくまかけ / 執筆者名:上辻 敏之

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