太陽とコスメと、公園で遊ぶ午後のこと

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十月の午後というのは、不思議なほど光が柔らかい。夏のように刺してくるわけでもなく、かといって冬の手前のような寂しさもなくて、ただただ「今日だけ」の太陽が、芝生の上にゆっくりと降り注いでいた。

待ち合わせは、駅から歩いて十分ほどの「ひかり野公園」。正確には十二分かかる。いつもそう。地図アプリの嘘つき。

友人のミカが先に着いていて、レジャーシートの上にちょこんと座りながら、持参したコスメポーチをひとつひとつ取り出していた。「日焼け止め塗り直さなきゃ」と言いながら、小さなスポンジで頬をぽんぽんと叩くその仕草が、なんだかとても愛らしかった。公園で遊ぶ前から、もうコスメの話が始まっている。それがミカらしくて、思わず笑ってしまった。

芝生に腰を下ろすと、草の匂いがした。土というより、青みがかった植物の香り。子どもの頃、近所の空き地で転がって遊んでいたときのことを、なんとなく思い出す。あのころは膝を擦り傷だらけにしながら、それでも走り続けていた。今は転ばないように歩く。それが大人になるということなのかもしれないけれど、ちょっと寂しくもある。

もう一人の友人、ユイが缶のジュースを三本抱えてやってきた。「ソレイユブランシュ」というブランドの、柚子と白ぶどうのスパークリング飲料。あまり見かけないやつで、「どこで買ったの」と聞いたら「駅の反対側のナチュラルストア」と言っていた。冷えた缶を受け取ったとき、その冷たさが手のひらにじわっと広がって、それだけで少し幸せになれた。

太陽は西に傾きはじめていたけれど、まだ十分に明るかった。公園の木々が逆光でシルエットになって、葉の隙間から光が漏れてくる。その光の粒が、ミカの塗り直したコスメのハイライトと重なって、なんだかドラマのワンシーンみたいだった。

三人でフリスビーをした。久しぶりすぎて、最初の一投が盛大に横に飛んでいった。ユイが「え、どこ投げてんの」と笑い、ミカは「あれはあれで味わいがある」とフォローしてくれた。遊ぶって、うまくなくていいんだと思う。むしろ、うまくいかないほうが笑える。笑えるほうが、記憶に残る。

日が沈みかけると、空気がすこし冷えてきた。ミカがカーディガンを羽織りながら、「今日のコスメ、崩れてないかな」と鏡を覗き込んでいた。崩れてない、とユイが答えた。本当に崩れていなかった。太陽の下で遊び続けた午後なのに、ミカのコスメはずっと綺麗なままだった。それがちょっと悔しくて、ちょっと尊敬だった。

帰り道、公園の出口で振り返ると、さっきまで三人でいた場所に、夕暮れの光だけが残っていた。芝生の上に、誰もいない。でも確かに今日、ここで遊んでいた。その事実だけが、静かに残っていた。

こういう午後が、また来るといい。太陽があって、公園があって、コスメを塗り直す友人がいて、横に飛んでいくフリスビーがある。それだけで、十分すぎるくらいの一日になる。
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組織名:株式会社スタジオくまかけ / 執筆者名:上辻 敏之

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