芝生の上に寝転がると、空がやけに広く見えた。
十月の公園というのは不思議なもので、夏ほど暑くもなく、冬ほど寒くもなく、ただ「ちょうどいい」という言葉がそのまま空気になったような場所だ。太陽は高く、でも刺すような強さはなくて、肌にやわらかく乗ってくる。日差しを浴びながら目を細めると、木の葉がきらきらと透けて、まるで薄いグリーンのシルクを光にかざしたみたいだった。
その日、友人たちと集まったのは「ミドリガオカ公園」——架空でも何でもなく、私たちがいつのまにかそう呼ぶようになった、駅から歩いて十五分ほどの小さな公園だ。正式名称は誰も覚えていない。それくらい、私たちにとっては「あそこ」でしかない場所。
レジャーシートを広げて、各自が持ち寄ったものを並べていく。サンドイッチ、ぶどう、謎のチーズ。そして友人のひとりが「これ飲んで」と差し出したのが、「ソレイユブランシュ」というハーブ入りのレモネードだった。瓶のラベルに小さな太陽のイラストが描いてある。一口飲むと、レモンの酸味の奥にカモミールのほのかな甘さがあって、午後の空気ごと飲み込んだような気持ちになった。
遊ぶというのは、子どもの専売特許だと思っていた時期がある。小学生のころ、放課後になるたびに近所の公園へ駆け出して、日が暮れるまで鬼ごっこをしていた。あのころの「遊ぶ」は全力で、泥だらけで、帰り道に靴の中の砂を出しながら歩くのがお決まりだった。大人になるにつれて、そういう時間はどこかに置いてきてしまったような気がしていたけれど、今日みたいな午後を過ごすと、ちゃんとまだ持っていたんだと気づく。
フリスビーを投げた。風に乗って想定外の方向へ飛んでいき、隣でうとうとしていた友人の頭のすぐ横に落ちた。「あぶなっ」と彼女は言って、それから少し笑った。私も笑った。謝りながら、でも笑いが止まらなかった。
公園で遊ぶとき、コスメのことを考える人は少ないかもしれない。でも実は、屋外の自然光の下というのは、メイクが一番正直に見える場所だ。室内の照明では気にならなかったファンデーションのよれが、太陽の光の下ではくっきりと浮かぶ。逆に言えば、自然光に映えるコスメは本物だということ。友人がつけていたテラコッタ系のチークが、午後の斜めからさす光の中でほんのり輝いていて、思わず「それ何?」と聞いてしまった。公園という場所が、一番正直なコスメのレビュアーかもしれない。
芝生の上を風が渡るたびに、草の青い匂いがした。遠くで子どもたちが走り回っていて、その声が風に混じって届いてくる。誰かが音楽をかけた。小さなスピーカーから流れるギターの音が、公園の空気にするりと溶けていった。
太陽が少し傾いてきたころ、誰ともなく「そろそろかな」という雰囲気になった。でも、誰も立ち上がらなかった。シートの上に寝転んだまま、空を見ていた。雲がゆっくり動いていた。
遊ぶって、結局こういうことなのかもしれない。何かをする、ではなくて、何もしなくていい時間を、好きな人たちと、好きな場所で、ただ過ごす。公園という場所は、そのための舞台として、いつも静かに開いている。
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組織名:株式会社スタジオくまかけ / 執筆者名:上辻 敏之

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