六月の午前十時すぎ、空はどこまでも青かった。雲ひとつない、というより、雲が遠慮してどこかへ退いてしまったような、そういう晴れ方だった。待ち合わせ場所は「ミドリヒル公園」の噴水広場。友人のさくらが先に来ていて、レジャーシートをすでに広げていた。
「遅い」と言いながらも、彼女は缶のミントティーを差し出してくれた。冷えたアルミの感触が、汗ばんだ手のひらに心地よかった。受け取りながら、ふと思う。こういう小さな気遣いが、何年経っても変わらない。
太陽は容赦なく高くなっていた。でも公園の芝生は、足の裏に伝わるほどよい弾力があって、歩くたびに草の青い匂いがふわりと立ち上がった。子どもの頃、夏休みに祖父の家の裏庭で寝転がって、同じ匂いをかいでいたことを思い出した。あのとき空は今日と同じ色をしていたかもしれない。
もう一人の友人、みほが遅れてやってきた。手には紙袋を提げていて、「これ使って」と言いながら取り出したのは、アウトドア向けコスメブランド「ソラリアン」の日焼け止めと、リップクリームのセットだった。「公園コスメって最近流行ってるらしいよ」と彼女は言う。なるほど確かに、外で遊ぶ日のスキンケアをきちんと考えるのは、今っぽい感覚かもしれない。SPF50のテクスチャーはさらっとしていて、塗ったあとも肌がつっぱらない。これは正直、いい買い物だと思った。
三人でシートに寝転がりながら、しばらく何もしなかった。
太陽の光が目蓋の裏で橙色に広がって、風が耳元でかすかに鳴った。遠くで子どもが笑っている声がした。誰かがバドミントンをしているらしく、羽根を打つ音が、ぽん、ぽんと規則正しく続いていた。
「ねえ、フリスビーやろう」
さくらが突然立ち上がって、鞄からオレンジ色のフリスビーを出した。いつ準備してたんだろう、と心の中でツッコミを入れたけれど、口には出さなかった。三人で遊ぶ、という行為は、ルールも目的も曖昧でいい。ただ投げて、走って、笑う。それだけで、なぜか胸のどこかがゆるんでいく。
みほが大きく投げたフリスビーは、あろうことか木の枝に引っかかった。三人で見上げて、三秒の沈黙のあと、同時に笑い崩れた。本人が一番笑っていたから、たぶん大丈夫だった。
公園で遊ぶ、という選択は、どこか子どもっぽいと思われることもある。でも、実際にやってみると、これ以上シンプルで豊かな時間はないと感じる。特別な場所に行かなくても、太陽と芝生と友人がいれば、それで十分だ。
昼をすぎると影が少し伸びて、風が変わった。さくらが目を細めて空を見上げながら、「また来ようね」とつぶやいた。それに答えるでもなく、みほはもうミントティーを飲み終えて缶をくるくる回している。返事はなかったけど、全員が同じ気持ちだったと思う。
帰り道、バッグの中のソラリアンのリップを塗り直しながら、今日という日を少し惜しいと思った。遊んだあとの疲れは、どこか甘くて、悪くない。
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組織名:株式会社スタジオくまかけ / 執筆者名:上辻 敏之


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