六月の夕方というのは、妙に長い。窓の外がまだ明るいのに、時計の針はもう七時を指していて、そのちぐはぐな感覚が、今夜の期待をじわじわと高めていた。
招待状には「サマーパーティー」とだけ書かれていた。友人の友人が主催する、こじんまりとしたガーデンパーティー。知っている顔が何人いるかも分からない。そういう場所に出かけていくときの、あの胸のざわめき——それを「不安」と呼ぶには、少しだけ甘すぎる。
鏡の前に座った。
テーブルの上には、使い慣れたコスメたちが並んでいる。先月、代官山の小さなセレクトショップで見つけた「LUMIEL PARIS(リュミエル・パリ)」のリキッドファンデーション、パール入りのハイライター、そして去年のパーティーシーズンから愛用しているディープローズのリップ。どれも、特別な夜のために取っておいたものだ。
ファンデーションをスポンジに含ませると、ほんのりローズウッドの香りが漂った。甘すぎず、かといって無機質でもない。この香りを嗅ぐたびに、不思議と背筋が伸びる気がする。子どもの頃、母が出かける前に化粧台の前に座っていた姿を思い出す。あの頃の私には、コスメというものが魔法の道具に見えた。母が鏡に向かうたびに、ぜんぜん違う人になっていくような気がして、こっそり扉の隙間から覗いていた。今、自分がその鏡の前に座っている。
チークを乗せながら、今夜のことを想像する。
2026年のパーティーは「体験型」へと進化している
と、どこかで読んだ。料理をみんなで囲んで、その場の空気ごと楽しむスタイル。知らない誰かと、ふとした瞬間に会話が生まれる。そういう夜に、出会いは転がっているものだ。
アイシャドウのパレットを開く。今夜はゴールドとテラコッタを重ねることにした。指先でぼかしながら、少しずつ目元に奥行きをつくっていく。ブラシの毛先が瞼をかすめる感触は、いつも少しくすぐったい。集中しているようで、どこかぼんやりとしている。そういう時間が、実は好きだ。
ふと、先週の失敗を思い出して苦笑いした。別の集まりに出かける前、同じようにリップを塗っていたら、うっかりキャップを閉め忘れたまま鞄に突っ込んでしまって、中身が惨事になったのだ。お気に入りのポーチが真っ赤に染まり、しばらく呆然としていた。あれ以来、キャップの確認だけは二度するようにしている。
2026年は、おもちゃのような見た目のコスメがトレンドになりそう
という話もある。かわいさと機能性が共存する時代。でも今夜の私は、少しだけ大人の顔でいたい。
マスカラを丁寧に重ねながら、「期待」という言葉について考えていた。パーティーに期待するとき、人は何を期待しているのだろう。美味しい食事? 賑やかな会話? それとも、まだ顔も知らない誰かとの出会い? たぶん全部だし、たぶんどれでもない。ただ、今夜の自分が「いちばんいい顔」でそこにいられること、それだけを願っている。
2026年のトレンドは「目立つための流行」ではなく、自分の好きや心地よさを大切にする価値観へとシフトしている
。それはコスメの選び方にも、パーティーへの向き合い方にも、確かに滲んでいる気がした。
リップを塗り終えて、鏡の中の自分と目が合った。
窓の外、夕暮れがようやく終わろうとしている。空の端がオレンジから深い藍色へと変わっていく、その境目の色が、今夜いちばん美しかった。鞄を手に取り、立ち上がる。ヒールの音が、フローリングに小気味よく響く。
今夜どんな出会いが待っているかは、まだ分からない。でも、この鏡の前で過ごした時間が、きっとどこかで背中を押してくれる。コスメを纏うということは、自分を整えることであり、同時に、外の世界へ踏み出す小さな儀式でもある。
扉を開けると、六月の夜気が頬に触れた。思ったより涼しくて、少し驚いた。
#曜日コスメ
#今日のメイク
#メイクのある暮らし
#コスメ好きさんと繋がりたい
#毎日メイク
#気分で選ぶコスメ
#週末メイク
#デパコスとプチプラ
#コスメレビュー
#美容好きと繋がりたい
#日刊ブログメーカー
組織名:株式会社スタジオくまかけ / 執筆者名:上辻 敏之

コメント