太陽の下で遊ぶ、それだけでいい。公園コスメと友人たちと、忘れられない午後のこと

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その日の空は、どこまでも青かった。

六月の終わりにしては珍しいほど風が柔らかく、公園の木々がざわざわと揺れるたびに、青葉の香りが鼻をくすぐった。「ねえ、今日ここ来てよかったよ」と友人のさくらがシートの上で大きく伸びをしながら言った。その言葉に、うんうん、と誰ともなく頷く。それだけで十分だった。

わたしたちが集まったのは、住宅街の奥に静かに広がる「千鳥ノ原公園」。駅から歩いて十五分、知る人ぞ知るような場所で、週末でもそれほど混まない。芝生はきちんと手入れされていて、裸足で踏むとひんやりと湿った感触が足の裏にじんわり伝わってくる。その感覚が、なんだか子どもの頃を思い出させた。小学生のとき、近所の公園でひたすらかけっこをして、転んで膝を擦りむいても泣かなかった、あの夏の午後。大人になってもこういう場所に来ると、体のどこかがふっと軽くなる気がする。

太陽は高く、容赦なく照りつけていた。でも不思議と暑苦しくはなかった。木陰に入ると空気の温度がすっと下がって、光が葉の隙間からまだら模様になって地面に落ちてくる。その光の中に手を差し込むと、指先がぽかぽかして、なんだか宝物を触っているみたいな気持ちになった。

「これ塗っといたほうがいいよ」と、みずきが小さなチューブを差し出した。架空のコスメブランド「ソレイユブルーム」のUVスティックだ。最近話題のやつで、白浮きしないのに日焼け止め効果が高いらしい。公園で遊ぶ前にコスメを整えるのが、今どきの外遊びスタイルになってきている。わたしも最近は日焼け止めにこだわるようになった。太陽の下で思いきり遊ぶためにこそ、ちゃんとケアする。それが今のトレンドだと思う。みずきからスティックを受け取って腕に塗ると、ほんのりシトラスの香りがした。

ひとしきり遊んだあと、四人でシートに寝転んだ。誰かが持ってきたラジオから、のんびりとした音楽が流れている。空を見上げると、雲がゆっくり動いていた。太陽が雲に隠れるたびに、世界の色がほんの少し変わる。それを眺めながら、なんでもない話をした。仕事のこと、最近読んだ本のこと、来月どこかに行こうか、という曖昧な計画。

ところで、みずきがUVスティックを渡してくれたとき、わたしは受け取ったつもりでそのままシートの端に置いてしまい、気づいたら芝生の上に転がっていた。「あ、落ちてる」とさくらが指摘してくれなければ、そのまま忘れて帰っていたかもしれない。コスメを大切にしている人に渡したのに、と少し申し訳なかった(心の中で小さくごめん、と呟いた)。

遊ぶということは、こんなにも単純で豊かだ。特別な場所に行かなくても、公園があればいい。太陽があればいい。隣に笑っている人がいればいい。

夕方近くになると、空の色が少しずつオレンジに変わってきた。風もさらに柔らかくなって、どこからか金木犀に似た甘い香りが漂ってくる。六月にそんな香りはしないはずだけど、そう感じた。シートをたたみながら、また来ようね、と誰かが言った。返事をしなくても、みんなの顔が「うん」と言っていた。

帰り道、わたしはずっと手に残るシトラスの香りを確かめながら歩いた。公園で遊んだ記憶は、こうして体に残る。コスメの香りと、太陽の温度と、芝生の感触と一緒に。それがなんだかとても好きだと思った。
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組織名:株式会社スタジオくまかけ / 執筆者名:上辻 敏之

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