目が覚めたとき、カーテンの隙間から秋の朝の光がすうっと差し込んでいた。10月の朝はまだ少し肌寒くて、布団の端を手繰り寄せながら、ああ、今日は休日だと気づく。アラームも、通知も、誰かに急かされる理由も、何もない朝。
洗面所に立って、鏡の中の自分をぼんやりと見た。平日はいつも、時間に追われながら下地を塗り、ファンデーションを重ね、アイラインを引いて、気づけば「仕事用の自分」を急いで完成させている。でも今日は違う。そういう日じゃない。
ドレッサーの引き出しを開けると、先週買ったばかりのミネラルファンデーションが目に入った。
ミネラルファンデーションは、肌にやさしくフィットしながら、下地なしでも自然なカバーと透明感を両立してくれる
と聞いて試してみたくて、ずっとしまい込んでいたものだ。休日の朝にようやくその出番が来た。
ブラシを手に取り、ふわりと頬に乗せる。粉の質感が指先に伝わって、思いのほか軽い。窓の外では金木犀がまだ少し香っていて、その甘い残り香が洗面所まで届いてくる気がした。秋の朝にしか存在しない、あの儚い匂い。
2026年のメイクトレンドは「ナチュラル × 素肌感」がキーワードで、濃いメイクより抜け感のある仕上がりが注目されている。
それを知ったとき、正直ほっとした。頑張りすぎなくていい、という許可をもらったような気分になったから。
チークは架空のブランド「Forêt Doux(フォレドゥ)」のクリームタイプを使う。
自然な血色と立体感をつくりたいので、チークはクリームタイプがおすすめで、内側から外側に少しずつ指で伸ばすのがコツだ。
鏡の前でゆっくり指を動かしていると、なんだか小学生のころ図工の時間に絵の具を混ぜていたときの感覚に似ている、と思った。あのころも、色が混ざる瞬間が好きだった。
リップは今日、あえて薄く。
自分の唇の色に近い色や、軽いツヤ感を持ったリップバームを選ぶと、全体の印象が柔らかくなり、よりナチュラルな仕上がりになる。
バームをひと塗りして、ティッシュで少し押さえる。それだけで十分だった。
ところで、眉を描こうとパウダーブラシを手に取ったとき、うっかりテーブルの端にぶつけて、ふわりと粉が宙に舞い上がった。朝の光の中でそれがきらきら光って、一瞬だけ綺麗だったのだけど、当然のように鼻の頭に降り積もった。鏡を見て、思わず苦笑い。リラックスした朝のメイクに、小さなドタバタはつきものらしい。
誰にも会わない休日は、盛らず・締めずのナチュラルメイクでリラックスする。目元に、頬に、唇に、色をふわっとぼかす——ただそれだけなのに、ムードある顔に見える。
そのことを、今日はじめてちゃんと実感した。
完成した顔を鏡でもう一度確認する。派手じゃない。でも、なんとなく好きだ。
派手に盛るメイクより、「今日も自分を整える」感覚のナチュラルメイクが、時代の気分に合っている。
そしてたぶん、自分の気分にも。
コーヒーを淹れて、窓際の椅子に腰を下ろす。陶器のマグカップが手のひらにじんわりと温かい。湯気がゆっくりと立ち上って、光の中で揺れている。誰かのためでも、どこかに行くためでもなく、ただ自分のためだけに整えた顔で、この朝を過ごしている。
それが、思っていた以上に気持ちよかった。休日のコスメ時間は、自分への小さな敬意みたいなものかもしれない。
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組織名:株式会社スタジオくまかけ / 執筆者名:上辻 敏之

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