洗面所の蛍光灯が、いつもより白く感じる。
今夜のパーティーは午後7時スタートらしいんだけど、私はもう4時から鏡の前に座っている。早すぎる。わかってる。でも落ち着かなくて、結局ファンデーションのパフを手に取ってしまった。ベースを塗り直すのはこれで3回目。最初に塗ったやつ、厚塗りすぎて顔が能面みたいになってたから全部落とした。2回目は薄すぎて、毛穴が主張しすぎてた。今回はちょうどいい、はず。
パーティーなんて、正直そんなに好きじゃない。
知らない人ばかりの場所で、飲み物片手に立ち話するあの感じ。気の利いたこと言わなきゃいけない空気とか、笑顔を作り続ける頬の筋肉の疲労とか。去年の春に参加した婚活パーティーでは、緊張しすぎて持ってたグラスを二回も落としかけた。一回目は自分でキャッチできたけど、二回目は隣にいた男性が受け止めてくれて、そのまま気まずい沈黙が5秒くらい続いた。あの5秒、体感では3時間くらいあった気がする。
でも今日は違う、かもしれない。
アイシャドウのパレットを開ける。これ、先月デパートで買った「ルナージュ」っていうブランドのやつで、店員さんに勧められるがままに1万2千円も出してしまった代物。普段の私なら絶対買わない値段。でもあの時の店員さん、すごく綺麗な人で、「お客様の瞳の色にぴったりですよ」なんて言われたら断れなくて。使うの今日が初めて。ブラシに取ったパウダーがキラキラしてる。細かいラメが光を反射して、まぶたに乗せるとほんのり温かみのある輝きになる。鏡の中の自分が、少しだけ知らない誰かに見える。
チークを入れる位置で5分悩む。頬骨の高いところ? それとももう少し下? スマホで検索したメイク動画を見ながら、ブラシを頬に当てては離し、当てては離し。窓の外からは夕方の車の音が聞こえてくる。エンジン音、クラクション、誰かの笑い声。世界は普通に動いてるのに、私だけがこの洗面所で時間を止めてる。
期待って、重い。
今日のパーティーで誰かに出会えるかもしれない、なんて思い始めたのは一週間前。友達から誘われた時は「まあ暇だし」くらいのテンションだったのに、日が近づくにつれて勝手に盛り上がってきた。新しいワンピースも買った。靴も磨いた。前髪も美容院で整えてもらった。こんなに準備したんだから、何か起きてほしい。いや、起きなくてもいいんだけど、でもやっぱり…みたいな。矛盾してる。
リップを選ぶ。引き出しの中には10本以上ある。ピンク、ベージュ、レッド、オレンジ。どれも「これだ!」と思って買ったはずなのに、今日に限ってどれもしっくりこない。結局いつも使ってるローズ系の色に落ち着く。唇に滑らせると、ほんのり甘い香りがする。この匂い、嫌いじゃない。
鏡をもう一度見る。照明の角度を変えて、横顔もチェック。完璧、とは言えないけど、悪くない。少なくとも、家を出る勇気は出た。
時計を見たら、まだ5時半だった。早すぎる。会場まで30分もかからないのに。
コスメポーチをバッグに詰める。念のため、リップとパウダーは持っていこう。あと油取り紙も。ハンカチも。財布、スマホ、鍵。全部確認して、玄関に向かう。靴を履きながら、ふと思う。今日会う人たちも、きっと同じように鏡の前で時間をかけてきたんだろうな、って。みんな期待を抱えて、不安も抱えて、それでも出かけていく。
ドアを開ける。外の空気は少しひんやりしてて、頬に当たる風が心地いい。
さて、どうなることやら。
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組織名:株式会社スタジオくまかけ / 執筆者名:上辻 敏之

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