休日だから、自分のためだけのコスメを選ぶ。ナチュラルメイクで整える、静かな朝の話

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目が覚めたのは、午前八時を少し過ぎたころだった。カーテンの隙間から、六月末の白っぽい光がゆっくりと床に伸びていて、その光の中にほこりが一粒、ふわりと浮いているのが見えた。今日は休日だ、と気づいた瞬間、体の奥からじわりと力が抜けていく感覚があった。

洗面台の前に立って、鏡を見る。昨夜の疲れが薄くにじんだような顔。でも、それが今日の出発点でいい。仕事のある日と同じ顔に仕上げる必要なんてない。今日は、誰かに見せるためではなく、自分のためだけにコスメを使おうと決めた。

引き出しの奥から取り出したのは、最近お気に入りの自然派コスメのセットだ。「ヴェルドゥール・ボタニカ」というブランドで、南仏の小さな農園から届く植物エキスを使ったラインナップ。パッケージは白と淡いグリーンで、開けるたびにほんのりとした草の香りがする。ラベンダーとカモミールが混ざったような、落ち着いた匂いで、それだけで少し気持ちが整う気がした。

スキンケアをていねいに重ねてから、まず手に取ったのはBBクリームではなく、薄づきのミネラルファンデーション。指先で少量を額から頬へとなじませていく。素肌がうっすらと透けるくらいの仕上がりが、休日には心地いい。子どもの頃、母親が鏡台の前で化粧をする後ろ姿をよく眺めていた。小さな刷毛が頬をかすめる音、ほのかに漂うパウダーの香り。あの朝の静けさに、今の自分の時間はどこか似ている。

チークはクリームタイプを選んだ。指でとって、頬の内側からぽんぽんとなじませると、じんわりとした血色が戻ってくる。鏡の中の顔が、少しだけ生き返るような感覚。リップは透明感のあるローズベージュ。塗ったのか塗っていないのかわからないくらいの色で、それがちょうどいい。

眉だけは少しだけ丁寧に整えた。毛流れに沿って、パウダーをさっと乗せる。ここを整えるだけで、顔全体がぐっと引き締まる。ブラシを持ち替えようとして、誤って眉パウダーのケースを洗面台の端に落としてしまった。ふたが開いて粉が少し散る。思わず「あ」と声が出て、自分でも笑ってしまった。休日の朝らしいと言えばらしい。

窓の外から、遠くで鳥の声が聞こえる。梅雨の晴れ間の朝は、光の質が柔らかくて、空気が少し湿っている。肌に触れる空気の温度がちょうど良く、鏡の前に立っているだけで、なんとなくリラックスできる時間が流れていた。

仕上げに、ミスト状のフローラルウォーターを顔全体にふわっとかける。冷んやりとした細かい水分が肌に降り積もる感覚。このひと手間が、メイクというより儀式のように思えてくる。

完成した顔を見ると、「盛った」感じはどこにもない。でも、なんとなく整っていて、自分の顔に少し優しくなれた気がする。休日のコスメは、こうでなくてはいけない。誰かのためではなく、今日一日を心地よく過ごすための準備として、ゆっくり時間をかけて、自分の肌と向き合う。

コーヒーを淹れながら、今日どこへ行こうかとぼんやり考えた。近所を少し歩くだけでもいいし、どこにも行かなくてもいい。どちらでも、この顔で過ごせる。それだけで、十分な休日が始まる。
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組織名:株式会社スタジオくまかけ / 執筆者名:上辻 敏之

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